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欧・中巡る史上最大の貿易紛争

ソーラーワールド主導で中国パネルをダンピング提訴

世界最大の生産地、中国と世界最大マーケットのEU、この超大国間を巡って、太陽光発電の歴史上、最大規模となる貿易紛争がついに始まった。

7月26日、欧州のモジュールメーカー20数社が組織した団体、EUプロサンが中国製モジュールのダンピング(不当廉売)認定とともに、法的措置によって貿易不均衡を是正するよう欧州委員会に提訴したのだ。

提訴の中心はもちろんソーラーワールド。EUプロサンの主張も米商務省へ提出した内容とほぼ同様で、「中国政府からの違法な補助金を手に不当廉売を繰り返した結果、中国メーカーはわずか数年の間で80%以上ものシェアを奪った。EUでは毎月のようにレイオフ、あるいは経営破綻する企業があとを絶たない」。

さらに「アンチ・ダンピング措置が発動されようとモジュール価格にいかなる影響もない。我々は破滅的な競争に終わりを告げ、雇用と成長、技術革新さらに地球環境のためにもEUにおいて持続可能な生産拠点の維持を目指す」と訴える。

だが、対する中国が黙って見過ごすはずもない。EUプロサンが提訴する10日前にはOCIやRECシリコン、へムロックなどを対象に、韓国およびアメリカ製ポリシリコンに対するダンピング調査の実施が伝えられたばかりである。

サンテックパワーやインリー、トリナ、カナディアンは共同で中国政府への異議申し立てを実施済みだ。

だがその一方で、貿易摩擦が生む報復措置、市場への影響を懸念する声はなお根強い。アメリカではダンピングを訴えたCASMに対抗するため、保護貿易への傾倒を反対するCASE(Coalition for Affordable Solar Energy)が設立された。

同組織の共同設立者がEPC最大手のサンエジソンであることからも解る通り、モジュールメーカーVSEPC、装置、原料、部材さらに中国勢という対立構造が生まれている。11月に予定されたITC(米国国際貿易委員会)による最終決定が近づくにつれ、両組織間にも緊張が走る。

欧州委員会がどのような判断を下すのか。政治的決着で終わるといった声もあがるが、現時点では憶測の域を出ない。その一方で、気になるのは欧米中、さらに韓国をも巻き込んだ貿易紛争が日本にも波及するのかどうかだ。

すでに日本はカナダ・オンタリオ州でのローカル・コンテント要求に対しWTOに提訴済みだ。さらに昨年5月にはWTOの補助金委員会の場においてインドへ懸念を表明。

いずれもFITのもとでの自国製品の使用の義務づけ、あるいは国産の優先的な使用を条件に補助金を与える行為は、WTOの規定に抵触すると訴えている。

ただ不当廉売となれば事情は一変する。いずれにせよ、政治的な駆け引きとともに事態は動きそうだ。

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