示された全量買取りにおける詳細案
6月中旬にも事前認定スタート
賦課金徴収に、東電値上げの余波が
だが不透明な文言も残る。それが電力会社との特定契約だ。そもそも全量買取りとは国民負担に基づく賦課金を電力会社が徴収し、この負担額を売電費用に充てるというもの。7・1以降、賦課金は電気料金に上乗せされた形で徴収されていく。だが、電力会社は規制分野である一般家庭の電力料金の値上げなど好き勝手にできる権限などない。一般家庭への値上げは経産大臣の許可が必要だ。そのため供給約款を見直さなければ賦課金は取れない仕組みとなる。だが、この供給約款の変更が進まないという。なぜか。問題は2つある。ひとつは政省令が正式決定していないこと。2つ目が東電による値上げ余波だ。
資源エネルギー庁再生可能エネルギー推進室安田將人室長補佐は「一般家庭が規制分野であるのに対し、大口需要家は自由分野。需要家が応じれば値上げも可能となる。だが東電の値上げが取り沙汰されてから、大口需要家のなかには約款変更に伴う契約更改を拒否するケースがある」という。
供給約款の遅れが何らかの形で、特定契約に影響するのでは。不安を隠さないEPCは少なくない。
その一方で「高すぎる価格が業界を歪ませ、国民負担を増加させる」との反対意見があるのもまた事実。実際、今年度のサーチャージ額は70円〜100円/月が想定された。
算定委員会の委員長である植田和弘京都大学大学院教授は、「所得を持たない人にとって普通の消費財でも高額となる。万人にとって良い価格など本来はない」と語ったが、国民負担となる賦課金なら尚更だ。
100円となる要因が既存設備の取扱いである。案ではRPS法や余剰電力買取り制度の対象設備まで全量買取りへの適用を謳う。
EPCからは「11円でしか売電できない既設も多いなか、たとえ1円でも高く売れるなら全量へと移行したいはず。だが一旦、連系した接続線を全量買取りの枠組みのなかで、再び連系することに、電力会社から不満が続出するのでは」といった声が挙がっている。
次に電力会社による接続拒否の事由だが、焦点のひとつが出力抑制だ。経産省では系統安定化の観点から電気供給量が需要量を上回る事態に備え、年間8%以内の割合(720時間以内)に限り、500kW以上の太陽光発電所や風力発電に対する出力抑制の発動権を電力会社へ与えた。
需要量を超えるとは5月の大型連休や年末年始を。あるいは天災事変や定期検査など想定してのこと。だが、今夏は原子力発電所の全電源が停止し、電力不足による不測の事態すら危ぶまれた状況だ。出力抑制による発電機会の損失が問題となるのは、遥か先のことだろう。
しかし、出力抑制を行うために必要な制御装置がなければ、接続拒否をされるというなら話は別だ。
「いま着工中の発電所すべてで対応しなければ。恐らくパワーコンディショナの入力電圧と電力会社の出力電圧をつなぐ必要があるのだろうが、どう対応すればいいのか。具体的な規定がない」(大手EPC)。
また抑制するとなると遠隔監視では不可能だ。となると適切な人員配置が求められることになる。なお、接続拒否の事由には、発電所内の機器を監視・制御するための監視制御装置を導入せよとの規定もある。文字通り読めば、遠隔監視システムが義務づけられたとも見て取れる。
だが、なぜ対象を500kW以上としたのか疑問が残る。主任技術者の不選任承認にしても、工事計画書の提出義務でも500kWから2MW未満への引き上げ議論の真只中だ。こうしたなかで500kWに規定することは時流に逆行するように映るのだが。
一方、設備認定の要項を見て、多くのパネルメーカーが安堵したことだろう。規定といえば、電源共通で設けた計量方法やメンテナンス体制の構築ぐらいである。対する10kW未満の住宅用はJ-PEC規格がスライド採用された格好だ。
ただ、変換効率に関しては住宅・非住宅共通の基準となる。それゆえ前年度のものが採用された。
今回、賦課金の減免措置に対する具体案も示された。電炉や鋳造業、ソーダなどの電力多消費産業を想定した減免措置。その対象となるのが、製造業ならば平均原単位が5.6kWhを超え、さらに年間電気使用量が100万kWhを上回る事業所となる。その減額率は従来通りの80%。
パブコメの意見集約後、経産省から改めて回答を示す。この工程を経て政省令等が正式に告示されるのが、6月中旬。この時点をもって、設備認定に関する事前認定が始まる。