残す期間はあと2年
システム単価35万円目指す 住宅用補助制度
09年の開始から5年でその役目を終えることが規定された住宅用太陽光発電システム導入支援補助金の12年度概要が発表された。
財源は11年度の第3次補正予算で計上された総額1194億円。うち340億円あまりが11年度中に消化された模様であるため、およそ820億円を12年度、13年度の2年間で使い切る格好だ。
なかでも今年度の特徴を成すのが55万円と47.5万円、2つに区分設定されたkW当たりのシステム上限価格である。当然、補助率も2分化され55万円ならば3万円、一方、47.5万円なら3.5万円とコスト低減に対する評価が補助額によって鮮明に打ち出された。
11年度までの3年間の削減幅が5万円であった過去の水準に対し、今回は最大12.5万円と一見すると大幅な引き下げに映るが、経済産業省にすれば、政策目標を着実に遂行させたいという強い意思表明でもある。資源エネルギー庁の月舘実課長補佐は「09年当時、およそ71万円だったシステム価格を5年間の政策誘導によって半減させたい。つまり35万円まで単価を低減させるという政策目標があった」という。
この35万円という数字は一般家庭の電気料金24円/kWhへの到達を念頭に置いたもの。「電力会社から買うか、自分で発電するか。その選択肢が拡がるラインが35万円でした」と語る。
いま価格決定権が調達価格等算定委員会に委ねられた余剰電力買取り価格にしても、基礎設計を担った東京工業大学の柏木孝夫教授によれば、「我々は48円から始まった価格を毎年6円ずつ、つまり42円、36円、30円、24円と5年間で一般電気料金と同水準となるグリッドパリティの実現を想定していた」という。
そこで上限価格についてもコスト低減を誘導するため、過去3年切り下げてきたが、11年度の価格は60万円だ。あと2年となった時間軸のなかで35万円に達するには、金額差で25万円が残る。この25万円を分割し12.5万円を30万円に上乗せた価格帯が先の47.5万円となったわけだ。「ただ、急激な引き下げで困惑を生まぬよう過去の事例に沿って55万円という価格も設定した」と一定配慮も示す。
一方、補助率設定については「導入補助を始めた当初から10%ほどの支援ができればと考えてきた。しかし10年に開かれた事業仕分けで、補助単価も出口戦略を見据えた形で段階的に低減させる方針が示された」と背景を語る。とは言え昨年度の事例通り、7〜8%の補助率は確保したいとの経産省側の意向もあり3.5万円が決定される。
さらに今年度は補助対象となるモジュール変換効率の基準値も改定された。詳細は別表の通りだが、一部関係者の間には「発電効率によって補助額が区分設定される」との憶測を呼んだ。
当の経産省も、一定の効率基準を満たさないモジュールへの補助減額を検討した痕跡も伺えたが、結果は技術の進捗状況を鑑み、さらに「価格低減のみ誘導した場合、劣悪な製品が市場に流れる可能性があった。有効なエネルギーインフラたるべく足切りラインを引き上げた」という。
なお、改定に際し発電効率の算出方法の統一も図り、モジュール化後のセル変換効率に規定済みだ。
「エネルギー政策や産業政策の側面を持つにしても、市場原理からすれば導入支援が必要な製品はやはり歪んでいる」(月舘課長補佐)。
13年度の上限価格が35万円、あるいは補助単価は2.5〜2.8万円になるといった価格想定など誰にでもできる。残された2年間という時間軸のなかで市場原理に基づき、本来あるべき姿へと発展できるのか。これが本質的な課題なのだろう。