環境省、太陽光パネルリサイクル義務化の素案公表
環境省はこのほど、太陽光パネルのリサイクルを義務づける新制度の素案を公表した。リサイクルに伴う費用は、太陽光パネルの製造業者や輸入業者、発電事業者が負担する形になる方向だ。(本誌・土屋賢太)
環境省は2024年12月16日、太陽光パネルのリサイクル(再資源化)義務化に関する新制度の素案を公表した。経済産業省と発足した有識者会議で24年9月から8回に亘って議論し、仕組みを考案した。25年の通常国会に関連法案を提出する方針である。
環境省の資料によると、21年度の太陽光パネルの中間処理能力が7万t/年であるのに対し、30年代半ば以降は最大で年間50万tに及ぶパネルが廃棄されると想定。中間処理の体制を構築できなければ、廃棄パネルによる感電事故や含有物の流出による環境影響だけでなく、最終処分場に埋めるパネルのゴミが溢れ、社会問題に発展しかねないのだ。そこで環境省は、経産省と連携して太陽光パネルリサイクルの義務化に踏み切った。
環境省環境再生・資源循環局総務課制度企画室の岡﨑雄太室長は、「太陽光パネルを適正にリサイクルする体制ができれば、最終処分量を大幅に削減でき、廃棄問題を解消できる」と話す。
案によると、リサイクルの費用を徴収する第三者機関を設け、太陽光パネルの製造業者と輸入業者には再資源化費用の納付を義務づける。一方、発電事業者には太陽光発電設備の使用前に解体費用の納付を義務づけつつ、設備の使用終了後に第三者機関から再資源化費用と解体費用が支給され、その資金で発電事業者が解体業者や中間処理業者に中間処理を委託する仕組みだ。
解体費用を捻出できずに廃棄パネルを放置する発電事業者が現れることを想定して、国は再生可能エネルギー特措法でFITやFIP(フィード・イン・プレミアム制度)を活用する事業者に廃棄等費用の積立制度を設けた。新制度では〝非FIT〟太陽光発電所の所有者も対象に積立制度を創設する。また、太陽光パネルの製造業者や輸入業者、発電事業者に太陽光パネルの型式や太陽光発電設備の所在、発電事業の開始・廃止時期などの情報開示を求め、再資源化費用や解体費用と紐付ける。このほか、広域的に廃棄パネルを回収し、中間処理を行える中間処理業者を認定する制度も設ける。
産業廃棄物処理業者の浜田営業部新規事業課の堀智広課長は、「パネルリサイクルの義務化は中間処理業にとって追い風だ。ただ、メーカーや発電事業者にとっては負担なので、再資源化費用や解体費用の金額設定が重要だ」と語る。
ある関係者も、「開始前に一括での費用負担になると、非FITの新規開発が滞る恐れがある。一定の条件を満たした場合の例外規定などを設けるべきではないか」と危機感を隠さない。確かに、費用負担が大きいと太陽光発電の普及を阻害しかねない。適切な価格設定が鍵を握ると言える。