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積水化学、ペロブスカイト太陽電池の量産開始へ

900億円投じて27年に100MW体制に

軽さを活かして普及へ

ペロブスカイト太陽電池は、高効率化と低コスト化のポテンシャルを秘める次世代太陽電池だ。主原料のヨウ素は日本で産出されるため、国内で供給網を構築でき、エネルギー安全保障の向上や産業競争力の強化に繋がる。特に積水化学が量産を決めたフィルム型は、薄くて曲げやすく、㎡あたりの重さが1kg程度と軽い。建物への設置可能性を拡げられるのだ。

それゆえ、国はペロブスカイト太陽電池への支援を強めており、24年5月に官民協議会を立ち上げ、11月に普及に向けた戦略をまとめた。これを受け、策定中の第7次エネルギー基本計画には、30年までにGW級の生産体制を構築し、40年までに約20GWの導入を目指す方針が盛り込まれた。

むろん、残り15年で20GWなので市場の主流ではないが、これは、ペロブスカイト太陽電池の発電原価が短期的には既存の結晶系パネルより割高になり、30年代でもkWhあたり14円~20円と想定しているからだ。そこで国はペロブスカイト太陽電池を当面は既存パネルと競合しにくい領域で普及させる算段で、積水化学は軽さを活かして耐荷重性の低い建物や壁面への導入を見込んでいる。

ただ、世界では既存パネルからの置き換えを狙う結晶系とペロブスカイト太陽電池を組み合わせたタンデム型の開発が活況だ。官民一体で練り上げた新戦略で、日本の太陽光パネルメーカーは復権できるのか。積水化学の今回の発表は、その試金石になりそうだ。

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