京セラ、小田原の小規模電力網事業で調印
京セラは2021年4月28日、神奈川県小田原市の小規模電力網事業で、市や協力企業と協定書に調印した。太陽光発電設備などを設置し、既存の配電網で電力を融通する。(本誌・岡田浩一)
京セラ(谷本秀夫社長)は、ブロックチェーン技術のエーエルアイテクノロジーズやEV(電気自動車)技術のレクシヴ、地域新電力会社の湘南電力、小田原市と共同で、20年9月より小規模電力網の構築を進めている。このほど、市内の都市公園『小田原こどもの森公園わんぱくらんど』に、出力50kWの太陽光発電設備と電力需要調整用の演算サーバやEV用充電器などを設置。今後は蓄電容量1580kWhの大型蓄電設備を導入し、今秋にも設備の配置を完了する。
平時は、設備を所有する湘南電力が公園内の配電網から園内の複数の管理棟へ太陽光電力を供給しつつ、一部の電力は自己託送制度を活用して遠方の消費地へ託送する。同社は、FITの売電期間が満了した市内の住宅用太陽光発電設備から調達する〝卒FIT〟の太陽光電力も用いて演算サーバを稼働させる。この際、エーエルアイテクノロジーズの技術で演算サーバに経済合理的な運用を選択させ、再生可能エネルギー利用の経済性を追求する。一方、非常時には上位系統と切り離して園内で電力を融通できるように検証していく。
一連の実証事業は、経済産業省の20年度『地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金』に採択されており、京セラが統括する。21年内に体制を整え、向こう6年間以上に亘って設備を運用していく方針だ。
小田原市は50年までの二酸化炭素排出量実質ゼロを目指して太陽光発電の導入を進めているが、守屋輝彦小田原市長は「気象の変化によって太陽光発電は発電量が変動するため、ためて使いやすくすることでさらなる普及に繋がる」と話す。
京セラ執行役員の濵野太洋経営推進本部長は、「再エネの主力電源化に向けて再エネ電力がまだまだ足りていないが、課題は変動再エネの安定化だ」と指摘する。
同事業では、太陽光電力を、蓄電設備で分単位に、演算サーバでミリ秒単位に調整し、EVを併用しながら効率的な設備運用を模索していく。