パナソニック、一部PCSや蓄電設備の生産停止 住宅用PCS需給逼迫か
半導体不足の影響を受け、パナソニックはこのほど、一部のPCSや蓄電設備の生産を停止すると通知した。早くも設備の奪い合いが始まっている。(本誌・岡田浩一)
パナソニックは2021年6月23日、一部の太陽光関連製品の生産を停止すると顧客へ通知した。住宅用や低圧用のPCS(パワーコンディショナ)のほか、住宅用のハイブリッド型蓄電設備や独立型蓄電設備も対象とした。すでに納期を提示した卸先には製品を納期通りに出荷するが、それ以外への供給の正常化は長ければ22年1月までかかるという。
原因は、世界的な半導体不足に加え、半導体の仕入先工場の事故によるもので、21年3月に発生した半導体大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場での火災事故の影響が少なからずあったものと思われる。
むろん、他社から調達を切り替えて生産を継続する方法もあるが、「半導体を変えると、各種認可などを取得し直さなければならず、余計に時間がかかる」(パナソニック広報部)との理由で同社は今回の対応を選択したようだ。なお製品や半導体の在庫はいくらか残っているようで、広報部は「(製品の)提供が1月以降になる可能性があることを案内したうえで、受注は続けている」という。
通知を受けて、同社のPCSを採用しているカナディアン・ソーラー・ジャパンとハンファQセルズジャパン、サンテックパワージャパンが住宅用太陽光発電設備などの受注を停止した。カナディアン・ソーラー・ジャパンの山本豊社長は、「パナソニックに限らず、PCSを含める住宅用や低圧用設備すべての受注を一旦止めて、メーカーから機器を調達できるか確認している」と状況を述べる。
パナソニック以外にも、台・デルタ電子が納期の期間を従来の2ヵ月から3~4ヵ月に伸びると顧客へ案内しており、それを受けてか、同社のPCSを採用しているシャープが一部住宅用PCSなどの供給が10月以降になるとの案内書を卸先へ送っているようだ。独・SMAも分散型の三相PCSが機種によって納期が7ヵ月程かかる可能性があるとしている。
ともあれ、現在リードタイムが短い住宅用や低圧用のPCSの需給が逼迫しているようで、ある商社筋は「自立運転機能つき住宅用PCSのメーカーが限られており、商社や販売会社では奪い合いが始まっている」と語る。
仮にPCS不足が長期化し、施工に影響が出れば、販売会社や工務店などの資金繰りは悪化しかねない。
他方、オムロンソーシアルソリューションズをはじめ、ニチコンやNFブロッサムテクノロジーズ、ヤマビシなどの蓄電設備系や、中・ファーウェイやイスラエルのソーラーエッジといった外資系では、生産停止や納期遅延の事態に陥っていないようだ。ただ、あるPCSメーカーの担当者は、「注文が殺到し、全てに対応できるか分からない。半導体の状況次第だが、秋口以降、正常に生産できるか読めない」と不安を語る。
半導体の需給逼迫は20年後半から世界中に広がった。コロナ禍で停止していたIT機器や自動車などの工場が一斉に稼働し、需要が急伸する一方、台湾では深刻な水不足で半導体洗浄用水が確保できなくなったほか、日本では20年10月に旭化成マイクロシステム、21年3月にルネサスの半導体工場で相次ぎ火災が発生した。品不足の解消は22年以降になるとの予測もある。
ある再エネ関連企業の社長は、「材料調達を1社に集中すると、調達費を低減できるかもしれないが、リスクは高まる。メーカー間のBCP(事業継続計画)対策の差がはっきりと見えてくる」と指摘する。