グローバルエンジ 北海道で蓄電所開発へ
電力小売りのグローバルエンジニアリングが北海道で蓄電所を開発する。FIPを活用する再エネ発電事業者を支援する狙いで、日本で初めての取組みとなる。(本誌・岡田浩一)
電力小売りやデマンドレスポンス(電力需要応答)を手掛けるグローバルエンジニアリング(福岡市、高橋宏忠社長)は2021年8月、北海道千歳市内に蓄電所を開発すると発表した。蓄電容量約6100kWh、出力約1.5MW規模の米テスラ製蓄電設備を採用する。22年秋の稼働を目指す。
同社は22年4月に導入されるFIP(フィード・イン・プレミアム制度)を見据えて蓄電所開発を計画した。というのも、FIPを活用する再生可能エネルギー発電事業者は、電力系統に流す再エネ電力量を予測し、あらかじめ計画値を提出して計画値と同量の再エネ電力を系統に流さなければならない。この〝計画値同時同量〟の実現は容易ではなく、達成するためには、複数の再エネ発電所を1つの発電所と見做して運用する発電BG(バランシンググループ)を組むのが現実的で、かつ発電BG内で調整できる電源がある方が有利だ。そこで同社はFIP事業者が参加できる発電BGに組み込むための蓄電所を開発、FIP事業者の事業支援を図った。
同社事業推進室長兼北海道支店長の田中雅智執行役員は、「最適な蓄電容量や出力、蓄電設備の運用方法を検証し、BGのあるべき姿を模索していきたい」と目的を語る。
同社は、工事費や系統接続費などを含めて蓄電所開発に約3億円投じる。うち2億円程は蓄電設備の費用に充てる。株主のエネ・ビジョンにEPC(設計・調達・建設)を委託する。補助金は活用しない。
テスラ製の蓄電設備を採用する理由について、田中執行役員は、「割安な価格に加え、応動性といった性能面や保証内容などを総合的に勘案した結果」と説明する。同社は電力小売りの顧客企業へ蓄電設備を設置してデマンドレスポンスも手掛けているが、その際もテスラ製の蓄電設備を扱っている。
なお、蓄電設備は発電所扱いだが、揚水発電所と同じように例外的に託送料金がかかる。送配電会社の託送供給等約款に基づき、事前に送配電会社と協議を行って『損失率』を定め、それを元に託送料金が算出される。仮に損失率が0.1と定まれば、100kWhの電力を充電した場合に10kWh分の託送料金が発生するというわけだ。
同社によると、これまで風力発電所や変電所などへ蓄電設備を併設する事例はあったが、蓄電設備単体で電力系統に接続して運用する取り組みは日本初になるという。