アンフィニが経営破綻 負債87億円
新電力のアンフィニが経営破綻した。昨冬のJEPX価格急騰の影響で債務超過に陥った。民事再生法で再建を目指すようだが、負の遺産をどう処理するのか。(本誌・川副暁優)
アンフィニ(大阪市、親川智行会長)は2021年9月30日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、監督命令を受けた。負債額は87億円にのぼるという。関係者によれば、支援を検討しているスポンサーが複数いて協議を重ねているようだが、「問題は福島工場」(関係者)であるらしい。
もっとも、経営破綻の直接の要因は、昨冬のJEPX(日本卸電力取引所)調達価格の急騰だ。インバランス料金の負担などで採算が悪化し、21年3月期は売上高が前期比20%減の53.4億円、14.2億円の最終赤字を抱え、11.3億円の債務超過に陥った。ただ、財務の悪化は以前から続いており、主因は福島工場への投資が招いた大損失であろう。
アンフィニが福島県楢葉町に太陽光パネル工場を稼働させたのは17年4月。約1万坪の敷地に延床面積約5000坪の建屋を新設し、年産能力250MWの生産ラインを導入、総工費は約75億円に及んだ。だが、翌18年には海外勢との価格競争に敗れ、販売は低迷。生産を縮小したものの、在庫は一時15億円まで膨れた。
同社は人員整理を検討したが、福島工場の建設に際し、60人以上の雇用を5年創出する条件で約48億円を経済産業省から『津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金』として受給していた。交付要件を遵守し、なかなかリストラには踏み切れなかったという。
結局、経産省との交渉の末、19年5月末に20人まで縮小したが、莫大な負債が残り、自力での再建は厳しい状況が続いていた。
ともあれ、当時なぜ経営トップの親川氏は福島工場への投資を決めたのか。関係者によれば、太陽光パネルを年間100MW販売できると踏んでいたようだ。恐らく、日本製を謳ってW単価50円で販売すれば、売上高は50億円だ。部材費や販管費を差し引いても、年間10億円は返済に回せると考えていたのかもしれない。
仮にもそうならば、いささか楽観的過ぎたと言わざるを得ないだろう。福島工場が稼働したのは、FIT始動から丸5年が経過した17年7月だ。すでに日本の太陽光発電市場は縮小に転じ、中国勢を中心に太陽光パネルの値下げ攻勢は激しさを増していた。事実、当時工場を新増設する日本の太陽光パネルメーカーはなく、アンフィニの工場建設には「無謀」との声もあった。
しかも、親川氏は、中国メーカーの工場を借りて生産するファブレスメーカーとして太陽光パネル製造を始動させており、敢えて工場を保有しない戦略でパネル事業を舵取りしていたのだ。日本で太陽光パネル工場を持つリスクは充分に把握していたに違いない。
ただ当時、同社の業績は好調で、17年3月期には売上高を165.9億円まで伸ばし、株式上場も視野に入れていた。親川氏は市場の情勢を冷静に見ることができなくなっていたのだろうか。