揺れる非化石市場 新制度移行も早期見直しか
不平等な新ルール!?
ルール変更とは、再エネ価値取引市場で取引されるFIT非化石証書の位置づけである。従来は、非化石電源として認められていたにもかかわらず、新制度移行に伴い、高度化法義務達成においては非化石電源として認められなくなったのだ。つまり、販売電力量が年間5億kWhを超える電力小売り会社にとってFIT非化石証書を集めるメリットはなくなったのである。
これについて、再エネ推進新電力協議会の三宅成也代表理事はこう指摘する。
「高度化法の義務達成に向け、電力小売り会社は大型水力や原子力由来の非FIT非化石証書を購入することになるが、これでは電力小売り会社の支出が大型水力や原子力を持つ大手電力会社に流れる構図だ」。
実際、非化石証書の取引が開始された20年11月以降の取引では、約定量の93%に当たる185億kWhが非FIT非化石証書で、約定額は総額208億円だった。つまり非FIT非化石証書のほとんどは、大型水力発電所や原子力発電所由来の証書ゆえ、電力小売り会社の非化石証書購入のための出費は大手電力会社へ流れたと推測できる。
一方、自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネージャーは、「多くの大型水力と原子力は、総括原価方式で電気料金が決められた電力自由化前から稼働しており、投資は回収済みのはず。仮にも大型水力や原子力由来の証書を市場で取引するならば、FIT非化石証書と同様に、証書の売り手は国がなるべきだ」と主張する。
事実、FIT非化石証書の売り手は国から受託したGIO(低炭素投資促進機構)であり、国民の再エネ賦課金負担を軽減するため、GIOはFIT非化石証書の売却収入を再エネ賦課金の原資に充てている。
さらに批判の矛先は、高度化法義務達成市場における最低価格の設定にも向く。というのも、再エネ価値取引市場の創設には証書の価格を海外水準に近づける狙いもあって、FIT非化石証書の最低価格はkWhあたり0.3円となる見込みだが、非FIT非化石証書の最低価格は同0.6円と定められた。しかも21年8月の取引ではFIT非化石証書のほぼ全量が最低価格で取引されたことを鑑みるに、新制度移行後も約定価格は最低価格になることが予想される。
この状況で市場が動くと、高度化法の達成義務がある電力小売り会社は証書を0.6円と割高に調達しなければならないのに対し、義務のない小売り会社は0.3円と割安に調達でき、公平性に欠ける。これについて、経済産業省は、「高度化法義務達成市場と再エネ価値取引市場の差額分を埋める方法を考えてほしいという意見があることは認識している。ただ現段階で対策は決まってない。あくまでも検討課題だ」との回答だった。
いずれにせよ、再エネ価値取引市場は11月19日から26日までに初回取引が実施され、高度化法義務達成市場も同時期に2回目の取引が行われる。今後の動向を注視したい。