福井県工業技術センター、発電する布を開発
公的研究機関の福井県工業技術センター(福井市、後藤基浩所長)はこのほど、球状太陽電池を編み込んだ発電する布を開発した。光の透過性や柔軟性を持つ点が特徴で、IoT(モノのインターネット化)端末と組み合わせた製品化を目指す。
同センターは、電気を通す導電糸に直径約1.2㎜のスフェラーパワー製球状太陽電池をはんだ付けした太陽光発電糸を開発。それをレースカーテン製造などに用いられる経編技術で編み込み、『太陽光発電経編ニット基布』をつくり上げた。10月に完成した試作品は24本の太陽光発電糸を編み込んだもので、長さは1.2mに及ぶという。新産業創出研究部ウェアラブル技術研究グループの笹山秀樹主任研究員は、「設計上の電圧12Vに対し、実際に測定したところ、10V以上の電圧を確認できた」と話す。
繊維産業は福井県の有力な地場産業の一つであり、今回の製品開発にも関連技術を活かしている。笹山主任研究員は、「歴史ある技術を高付加価値化していくうえで、当センターでは糸や布に電子部品を搭載する『e−テキスタイル』製品の研究開発を進めている。太陽光発電糸や太陽光発電経編ニット基布もその一環であり、球状太陽電池が取れないよう編み方なども工夫した」と説明する。
太陽光発電経編ニット基布は、得られる発電量こそ多くないが、光の透過性や柔軟性があることから、発電するインテリアとしての活用を想定しているようだ。蓄電池を併設すれば、フットライトや非常時の防犯カメラの電源に使える可能性があるという。笹山主任研究員は、「年度内に太陽光発電経編ニット基布を用いたアプリケーションの実証試験も進めていきたい」と語る。