東芝、再エネ電力取引ツール開発
アグリゲータを支援
東芝(綱川智社長)は2021年12月15日、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源を束ねて電力市場で取引するアグリゲータを支援するAI(人工知能)システムを開発した。アグリゲータの事業リスクを回避し、収益確保に繋げる手法を提供することで、〝非FIT〟やFIP(フィード・イン・プレミアム制度)における再エネ取引の活性化に寄与する構えだ。
開発したシステムは、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場と時間前市場に対し、実需給前日のスポット市場入札時に両市場への売り入札量の最適な割合を算出するもの。具体的には、AI技術で再エネ電源の発電量と、スポット市場と時間前市場の価格を、それぞれ30分毎に1日48取引分予測する。そのうえで、双方の変動で起こり得る取引機会の損失などの市場リスクや、計画値と実発電量の過不足で発生するインバランスリスクを考慮し、最適解を導き出すという仕組みだ。
同社は、リスクの評価に金融業で使われる『CVaR』を用いた。当日の各予測データと、過去の発電量や市場価格の予測値と実績値で構成される過去データから、当日に発電量が上振れしたり、下振れしたり、市場価格が変動したり、起こり得る変動パターンを多数つくる。そのパターンを組み合わせつつ、インバランスリスクなどの制約条件を加えて数値化するというわけだ。
このリスク評価によって、スポット市場と時間前市場における収益を最大化する売り入札量の割合を導き、アグリゲータによる戦略的取引の意思決定を支援する。
同社は21年12月1日、東芝ネクストクラフトベルケと東芝エネルギーシステムズが参加する実証実験に今回の技術を提供した。東芝研究開発センター知能化システム研究所システムAIラボラトリーの吉田琢史フェローは「今後は、当日の時間前市場での取引や、容量市場、需給調整市場に対応したAI技術の改良を進めていく」と方針を語った。