三谷電池技術研究所、大阪市の防災訓練で新種の蓄電池を実証
大阪市立大学発のベンチャー企業、三谷電池技術研究所(大阪市、三谷諭代表)は9月8日、大阪市東成区が実施した防災訓練に独自開発した蓄電設備を提供した。リチウムイオン蓄電池と異なる新種の蓄電池ゆえ、携帯電話の充電など実際の使用における効果を検証した。
同社が防災訓練に提供した蓄電設備、『水系電気二重層キャパシタ』は、活性炭電極の蓄電池を使う。一般に同種の蓄電地は電解液に硫酸ナトリウムを使用するが、同社は食塩水で代替する技術を開発。安全性の向上と原材料費の低減を図った。
さらに、普及しているリチウムイオン蓄電池と比べ、水系電気二重層キャパシタは充電した際のエネルギー密度こそ劣るものの、入出力の切り替えが早く、繰り返しの使用による劣化は少ないという。長期間放置した際の劣化も少なく、防災用のほか工場のバックアップ電源としての用途も期待できるようだ。
そこで同社は、避難施設に見立てた大阪市内の小学校に蓄電設備を提供。防災訓練で、市民が携帯電話の充電をしたり、逆に手回し式の充電器で蓄電設備に充電したりといった体験ができるように開放した。
一方、同社は、有機化合物を電極に、食塩水を電解液にそれぞれ使用した『有機二次電池』の開発も進める。活性炭電極の水系電気二重層キャパシタよりも、充電時のエネルギー密度が高く、原材料は炭素や水素、ナトリウムなど安価な物質。それだけに三谷代表は、「1kWhあたり10万円程度で供給できるだろう」と見込み、発火の危険性や供給量不足といった課題のあるリチウムイオン蓄電設備の代替品としての利用を狙う。
同社は2020年までに双方の蓄電池の実用化を目指し、売上目標は3000万円としている。また今後1年に1回程度は、大阪市内の防災関連イベントに設備を提供する方針である。