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高砂熱学工業 水素活用の小規模電力網構築

空調設備施工の高砂熱学工業は2022年4月、北海道石狩市で太陽光電力由来の水素を活用した小規模電力網(マイクログリッド)の運用を開始した。電力系統からの電力供給が途絶えても、太陽光発電設備や蓄電設備、燃料電池で電力を供給し、避難所に72時間以上給電できる仕組みを構築した。

同社は、出力163.4kWの太陽光発電設備と蓄電容量168kWhの蓄電設備に、水素製造能力1N㎥/hの自社製水素製造装置と貯蔵量120N㎥の水素タンク、出力2kWの燃料電池を活用し、道の駅や学校など5つの公共施設を自営線で結んで小規模電力網を構築した。太陽光発電の余剰電力を蓄電設備にためつつ、水電解式の水素製造装置で水素を生成。タンクに水素を充填しておき、燃料電池を併用して5つの施設に電力を供給する。

平常時は、系統から電力を調達するが、小規模電力網内の5施設の電力需要は年間約40~50万kWhで、ピークは140kW程度ゆえ、需要の約20%を再生可能エネルギー電力で賄えるとしている。

非常時は、自立運転に切り替え、太陽光発電設備と蓄電設備、燃料電池から特定負荷の指定避難所に給電する。天候不良などで太陽光発電からの電力供給が途絶えても、最大約4kWの電力を72時間給電できるという。

電力損失の低減を目的に、太陽光発電設備と蓄電設備、燃料電池を直流で繋ぎ、1台のPCSで交流電力の水素製造装置などと繋ぐ設計を導入した。蓄電設備と水素製造装置は系統電力を使用しない仕様とし、再エネの自給率を高めた。

今回の事業は石狩市からの受託事業で、同社は21年に運営権を獲得した。100%子会社の石狩厚田グリーンエネルギーを通じて運営していく。

高砂熱学工業研究開発本部カーボンニュートラル事業開発部の石塚朋弘担当部長は、「防災に特化した設備で、試算上の再エネ利用率は90%を超える」と語る。

事業期間は10年間だ。同社は水素の知見を深め、今後2年内に水素製造装置の大型化を進めるという。自社開発の水素発生装置を活用して取引先の省エネルギー化など事業拡大に繋げたい考えだ。

北海道石狩市厚田地区の道の駅に設備を設置した(左)。景観に沿うように設備を塗装し、厚田地区の子供たちがデザインした装飾を施した(右)

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