日本工営、フライホイール蓄電設備を開発
再エネの出力変動対策などに
日本工営(東京都千代田区、有元龍一社長)は2020年8月3日、独ストルネティックと量産型フライホイール蓄電設備を共同開発したと発表した。長寿命で高速充放電が得意といった特徴を活かしながら、特性の異なるリチウムイオン電池や鉛電池と組み合わせて提供していく方針だ。
フライホイール蓄電設備とは、回転体であるフライホイールを回すことで電気エネルギーを運動エネルギーに変換し、蓄電できるというもの。機械式であるため、高速応答が可能で、充放電を繰り返しても蓄電容量が劣化しないことから設計寿命が長い。化学材料を使っていないので環境負荷が小さく、火災リスクも低いといった強みを持つ。短時間で高出力の充放電ができるため、太陽光発電や風力発電といった変動性再生可能エネルギーの出力変動対策における短周期の周波数調整用としての活用も期待されている。
同社がフライホイール蓄電池メーカーであるストルネティックと共同開発したフライホイール蓄電設備は、1台あたりの定格出力が60kW、蓄電容量が3.6kWhで、小型でありつつ、複数台を接続できる拡張性を有する点が特徴だ。充放電時間は約260秒、応答速度は約30ミリ秒、設計寿命は25年である。
同社は18年度から『福島県再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業補助金』を活用し、研究開発を本格化。産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)にて実施していた小規模電力網(マイクログリッド)の模擬環境における動作試験が20年6月に終了し、このほど製品化に漕ぎつけた。
FREAでの試験では、自社開発したEMS(エネルギー管理システム)を使いながら、周波数変動における短周期部分をフライホイール蓄電設備で吸収することで、リチウムイオン電池や鉛電池の充放電電流や回数を大幅に低減できる効果を確認。そこで同社は自社製EMSとともに、特性の異なるリチウムイオン電池や鉛電池と組み合わせたハイブリッド蓄電設備として提案していく方針だ。
パワー&デジタル事業本部研究開発室の高橋邦弘技師は、「小規模電力網などにフライホイール蓄電設備を周波数調整用として併設することで、リチウムイオン電池などの長寿命化に繋がる可能性がある」とし、フライホイール蓄電設備の導入費用がリチウムイオン電池などと比べて高価である点をハイブリッド化することで補う狙いだ。
同社は小規模電力網のほか、高速応答を活かした需給調整市場向けでの採用も視野に入れる。同室の小川隆行室長は、「まずは市場ニーズを探したい」としたうえで、「国内にとどまらずアジア各国にも展開できれば」と意気込む。︎