リコー、エッジデータセンター向け蓄電設備の実証開始
特性異なる使用済み車載電池を活用
リコーは2022年11月25日、エッジデータセンターの脱炭素化を目指した蓄電設備の実証事業を始めると発表した。太陽光発電と連携しつつ、特性の異なる使用済み車載蓄電池を使用している点が特徴だ。物流などを含めた循環型の仕組みの構築を目指す。
同社は静岡県御殿場市の環境事業開発センターに使用済み車載蓄電池を使った蓄電設備を設置。同センター内にある合計出力37kWの既設太陽光発電設備のうち、19kW分を活用し、エッジデータセンターの電力消費を模擬した電子負荷装置を用いた実証事業を行う。蓄電容量は非公表としたが、EV(電気自動車)とHEV(ハイブリッド車)から排出された特性の異なる使用済み蓄電池を用いている。
同社リコーデジタルサービスビジネスユニット日本極統括環境・エネルギー事業センター第2開発室開発2グループの蔀貴行氏は、「両方ともリチウムイオン蓄電池だが、EV用は大容量、HEV用は高出力といった異なる特性を持つ。それらを並列に繋ぎつつ、双方の特性を最大限に活かせる最適制御を実現させたい」と話す。
同社は18年度から2年間、環境省の実証事業として、HEVの使用済み蓄電池を用いたEV急速充電器の補助電源用蓄電設備を開発。同センターの原田忠克第2開発室室長は、「今後HEVの使用済み蓄電池の大量発生が予測されるなかで、当社が複写機の再使用・再資源化で培ってきた知見などを活かせると思い、開発に着手した」と説明する。今回の実証事業はそれに続くもので、環境省の別の実証事業に採択されている。
今回の実証事業では今後拡大が見込まれる利用場所の近くで情報処理を実行するエッジデータセンターでの活用を想定。原田室長は、「データセンターでも再生可能エネルギーによる脱炭素化を目指す動きが活発になっており、変動を吸収できる蓄電設備に対する需要もある」としたうえで、「車載蓄電池の大量廃棄の開始が予測される25年頃までに事業化できれば」と語る。
使用済み蓄電池を活用していくには、物流や検査などを含めた処理体制の構築が欠かせないが、同社はすでに複写機で同様の仕組みを構築済みである。事業化に向けてはそれらも活かす構えだ。