三井物産、VPP実証本格
関東6ヵ所に米製充放電システム導入
総合商社の三井物産(東京都千代田区、安永竜夫社長)は今年9月までの1年間、関東6ヵ所でVPP(仮想発電所)実証実験を順次開始した。施設に蓄電設備を設置し、遠隔で充放電を操作するシステムを導入。出力安定性の検証を継続する。
実証試験では、実際に蓄電設備を稼働させている事業所でピークカットを行う。蓄電設備の充放電を遠隔操作する専用のシステムを用い、事業所の電力需要が増えた際に、電力の調達先を電力系統から蓄電設備に切り替える。事業所内の電力の最大需要量を抑え、契約電力を下げるのが目的だ。
実証拠点は、関東圏のリサイクル施設やスポーツクラブ、電気通信工事のミライトが保有する研修所など6ヵ所。昨年9月から今年9月にかけて、蓄電設備と充放電システムを稼働させた。
同社は2015年に、蓄電設備の遠隔充放電システムを開発する米ステムに出資し、翌16年には同じく遠隔充放電システム開発の米サンバージに出資。16年度より経済産業省のVPP構築事業に参画し、施設にステムとサンバージの充放電システムを導入して検証する計画を進めた。
三井物産プロジェクト本部次世代プロジェクト開発部・第三営業室の高橋佑太氏は、「ピークカット分の利益を事業者が得るには、蓄電設備が安定していることを電力会社に示し、契約電力を下げてもらう必要がある」とし、「昨年稼働したシステムは安定していたが、新稼働のものはまだ実績の蓄積が必要。全施設での安定稼働を確認してから電力会社へ申請する」と語る。
さらに太陽光発電との組み合わせについて、高橋氏は「蓄電池が高価なため、蓄電池単体のピークカットだけでは利益はでない。やはり太陽光を導入して、日中の従量料金を下げ、ピークを朝夕へシフトさせることが重要。太陽光を導入することで、蓄電設備の採算が何とか取れる例もある」とし、「調整力市場が立ち上がり次第、展開できるよう準備を進めていく」と述べた。