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東電HD、電力小売りの新会社設立

P2P視野に年度内にも住宅用太陽光設置へ

東京電力ホールディングスは3月29日、再生可能エネルギーを積極的に扱う電力小売りの新会社を設立した。住宅に設置した太陽光発電設備や蓄電池で発電・蓄電した電力を直接売買できるP2P(電力直接取引)モデルの構築を目指し、年度内にも第三者保有形式での住宅用太陽光発電設備の設置を始める。東電グループの住宅用太陽光市場への参入に注目が集まりそうだ。

東電HDが100%出資で設立したトレンディ(東京都千代田区)の狙いは電力のP2Pモデルの構築。社長に就任した妹尾賢俊氏は、金融業界出身でブロックチェーン開発やフィンテック分野での豊富な経験を持つ人物だ。

妹尾社長は、「金融業界と同様に、電力業界も中央集権型から非中央集権型に移行していく流れにある。我々はその一翼を担っていきたい」と意気込む。

まず第1弾として、電力小売りサービスの提供を開始。『あしたでんき』と名付け、一般家庭向けに2つの電気料金プランを用意した。妹尾社長は、「再エネ比率を上げたい思いはあるが、まずは市場調達が中心。電力小売りは次の段階への入口にもなる。ローコストオペレーションで価格メリットを打ち出したい」と話す。

そしてP2Pモデルの構築を睨んだ第2弾となるのが、住宅用太陽光発電設備の設置事業だ。P2Pでは、太陽光発電や蓄電池を使いながら、家庭間で電気を直接売買することになるからだ。

妹尾社長が「より設置してもらうには、家庭での負担を最小限にとどめることが大切だ」と話すように、単純に販売するのではなく、住宅用太陽光発電設備を無償で設置する第三者保有モデルを活用する方針。年度内にも開始する予定だ。

妹尾社長は、「蓄電池を併設するモデルもあるだろうが、まずは太陽光発電だけを設置する。当面はFITを活用する形になるだろう。資金調達の仕組みもこれから検討していく」としたうえで、「単に無償で太陽光発電設備を設置するだけではなく、ニーズを見極めながら独自の付加価値サービスを提供するつもりだ」と語る。

続く第3段階となるP2Pモデルの構築については、「来年度にはPOC(概念実証)を始めたい」(妹尾社長)としつつも、蓄電池からの逆潮流や託送料金体系など、制度設計に関する課題も残っており、もう少し時間を要しそうだ。

いずれにせよ、東電グループが住宅用太陽光発電設備の設置事業を本格化させるインパクトは大きい。第三者保有モデルの提案も増えており、住宅用太陽光市場が新たな局面を迎えそうだ。

トレンディの妹尾社長

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