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みんな電力、電力の直接取引システム開発へ

18年秋実用化目指す

電力小売り事業を展開するみんな電力(東京都世田谷区、大石英司社長)はこのほど、ブロックチェーン技術を活用したP2P(電力直接取引)のプラットフォーム開発に着手した。基本概念設計を終え、実証段階に入っている。2018年秋の実用化を目指す。

同社は、太陽光発電所などの再エネ発電所と、企業などの需要家が直接電力を取引できるシステムを、ブロックチェーン技術に精通したベンチャー企業のエアリアル・ラボ・インダストリーズと共同で開発している。「RE100に加盟しているなど、再エネ電力を積極的に活用したい企業が増えている」(みんな電力取締役の三宅成也事業本部長)ためだ。

システム概要は、まず同社がブロックチェーン技術を活用し、各発電所の発電量と、各需要家の電力使用量の、それぞれ30分値をすべて記録する。それらをトークン化、たとえば1kWhの電力を1トークンといった仮想通貨へと置き換え、発電量と電力使用量に応じてトークンのやり取りを行い、仮想的に発電所と需要家が直接取引したかのようにする。発電所と需要家は、みんな電力が『RE100プール』と名付けた取引市場でやり取りしていく。

同システムを活用することで、需要家がどこの発電所から直接電気を購入しているか分かるようになるほか、発電所毎の料金メニューの作成も可能になる。発電事業者は価格以外にも、たとえば有名人の再エネ発電所である、あるいは故郷の再エネ発電所であるといった付加価値で勝負することもできる。また現状FIT案件は環境価値をうたって販売することはできないが、FIT切れ案件であれば、環境価値も大きな付加価値となるだろう。

実際の需給バランスの調整については、みんな電力がこれまで通り行う。

ただ、太陽光発電や風力発電は変動電源であり、それらの比率が増えすぎると需給調整が難しくなる。そこで同社は、まずは供給過多にし、余剰電力をJEPX(卸電力取引市場)へ売ることで調整する仕組みを検討している。しかし、JEPXに販売する場合、発電事業者が付加価値をつけて販売することができないため、発電所側に利点が生まれなくなる。そこで同社は、できるだけ余剰を発生させないため、蓄電池や電気自動車の所有者も電力取引に参加できるようにし、需給調整をしやすくする方針だ。また、バイオマス発電所や小水力発電所などの市場参加も積極的に促していく。

同社は現在、約70ヵ所の再エネ発電所から電力を調達しており、発電量は年間約5000万kWh。これを18年中に「現在の10倍、年間5億kWhの再エネ発電所が我々のプラットフォームを活用してもらうようにする」(三宅事業本部長)目標だ。

4月以降、発電事業者や需要家などを募って、パイロット実証試験を行う。まずは18年秋を目標に、実用化第一段階となる、従来の料金メニュー形式で発電事業者と需要家を紐づける仕組みの提供開始を目指す。19年以降は、発電所が料金メニューを作り、売買できるような仕組みにしていく計画だ。

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