デジタルグリッド、電力自動取引システム開発
19年事業化へ
デジタルグリッド(東京都千代田区、阿部力也会長)はこのほど、発電所や需要家同士が電力を自動で取引できる売買システムを開発した。2019年度の実用化へ向け、実証試験を進めている。
同社はDG(デジタルグリッド)という電力融通技術を活用し、電力売買サービスを提供する。DGは、東京大学で特任教授を務めた同社の阿部力也会長が開発した技術。装置は、発電所を識別でき、電力融通決済機能などを持つため、発電所や需要家に設置すれば、自動で電力を融通し合う取引が可能になる。
同サービスを活用すれば、たとえば、ある発電所が100の電力を発電し、他の発電所が150の電力を発電して250の電力を供給できる場合、複数の需要家が入札方式で各々が必要な電力を購入できる。需要家が事前に購入上限価格を提示すれば、装置が自動で購入先を探し、売買契約を結ぶ。
太陽光発電設備や蓄電池を所有する需要家は、電力の売り手にも買い手にもなれる。「安い電力がほしい」、「高くても再エネ電力がほしい」といった要望を出すこともできる。
阿部会長は、「FIT売電用の再エネ発電所の電力は送配電事業者が買取るので対象外だが、FITを利用しない再エネ発電所や19年以降のFIT切れ太陽光設備の所有者は、当社のサービスを活用できる」と話す。
仕組みはJEPX(日本卸電力取引所)と似ているが、DGは電力の発電元や種類から取引時間や取引量まですべてデータとして残り、それらが人の手を介さずに自動で処理できる。装置は3万円程で、設置費は低圧需要家であれば、ほぼ無償だという。
同社は、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の委託を受けて、埼玉県浦和美園地域で17年度より3年間実証試験を行う。太陽光発電設備が設置された大型商業施設や家庭間で電力を融通し、データを収集する予定だ。
同社設立は17年10月、設立時の出資金は1000万円。だが、立山科学工業やフジクラ、イオンディライトや東京ガスほか、18年4月上旬までに出資会社は30社を超え、出資金は5億円程度になる予定。阿部会長は、「出資会社にはお金を出してもらうだけではなく、DGを活用していただく。電力の需給調整がしやすくなるので、新電力会社が多い」と話す。