シャープ、DCエアコン発売
シャープ(大阪市、髙橋興三社長)は12月、直流(DC)電力で稼働するエアコンを発売した。蓄電池に蓄えた直流電力をPCS(パワーコンディショナ)で交流に変換せずに使用できる。太陽光発電システムのユーザーを中心に拡販していく。
新製品は、交流電流で稼働する室内機と、交流と直流どちらにも対応した室外機からなる。室外機は、交流電流で初動するが、蓄電池の残量が一定以上あるなどの条件を満たしたとき、蓄電池からの直流給電に切り替わる。
一般に、家電製品は交流電力で稼働するが、太陽光発電が生み出す電力や、蓄電池にためた電力は直流だ。太陽光や蓄電池の電力を使用する際には、PCSで交流に変換する。
それだけに、太陽光発電システムと蓄電池にはそれぞれPCSが必要で、太陽光で発電した直流電力を蓄電池に蓄える際も、PCSでいったん交流に換え、さらに蓄電池側のPCSで交流から直流に戻す必要があった。
しかし、直流を交流に変換すると、電力ロスが発生する。そこで同社は2つのPCSを一体にしたハイブリッド型を商品化し、太陽光の直流電力をそのまま蓄電池にためられるようにした。
新製品は直流電力で稼働するため、太陽光、ハイブリッドPCS、蓄電池と組み合わせることによって省エネ効果が増す。同社によれば「交流給電と比べ、直流給電では電力の変換ロスを最大で約5%低減できる」という。
さらに深夜の安い電力を蓄電池にため、夕方から夜間にかけてエアコンを使用すれば、節電効果は一層高まる。同社によれば、家庭の電気代の4分の1を占めるエアコンの電気代は、9割が室外機によるものだという。
新製品は冷暖房能力が異なる3機。価格は高性能品から順に69万円、59万円、52万円だ。
同社は今後蓄電池の普及が進むとにらみ、新製品を開発した。電気代が上昇し、一方で売電価格が下落すれば、売電よりもつくった電気をすべて消費する方が経済的だ。蓄電池のニーズが高まるのは言うまでもない。
太陽光発電市場が縮小するなか、同社は蓄電池の用途の幅を広げるアプリケーションを開発することが蓄電池と太陽光発電システムの販売を後押しすると考えている。
新規のユーザーに向けてはDCエアコンを含めた〝家まるごと〟提案を、同社の太陽光発電システムを設置した既存のユーザーに対しては、PCSの買い替え時などにハイブリッド型PCSと蓄電池にDCエアコンも提案していく。今後直流電力で稼働する冷蔵庫の販売も検討している。
なお、DCエアコンはシャープ製蓄電池のみに対応。また、ユーザーは別途HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)が必要だ。