市民エネルギーちば、営農型太陽光にパネルオーナー制度を適用
市民エネルギーちば(千葉市美浜区)は、千葉県匝瑳市の農地で、営農を継続しながら太陽光発電を行うソーラーシェアリングに、パネルオーナー制度を適用させるという取り組みを10月から開始した。
同社は社員9名の「合同会社」という形態で、それぞれ環境や自然エネルギーに関わる団体や企業に所属している。市民発電所設立に特化した法人で、資金調達には、疑似私募債やパネルオーナー制度を活用する。
匝瑳市に施工した発電所『Sun Agri』は総出力35kW。発電所の投資額は約900万円で借入により調達した。営農は社員の1名が行っている。パネルはアメリソーラー製70Wを501枚設置。パネル1枚から市民がパネルのオーナーになることができる。
同発電所のパネル1枚の金額は2.5万円。オーナーには1枚につき毎年2千円の賃料が支払われる。10年が経過すると、パネルは同社に1万円で売却が可能なため購入者には5千円のバックがあるというスキーム。元金に対して2%の利益となる計算だ。現在、パネルオーナー数は23名、販売パネル枚数は201枚となっている。
このスキームの提供は、市民ソーラー(東京都千代田区、澤光春社長)で、これまで山梨県北杜市に7機の低圧発電所を建設している。社長の澤氏は、大手総合商社で勤務し、再エネ事業に取り組むも、当時の経営方針により断念。退職後、発電デベロッパーとメーカーと共に、長崎平戸に風力発電所3万2千kWを建設した経歴がある。
北杜市の発電所では、255Wパネルを1枚から販売する。市民ソーラーがそのパネルを借り受け、毎年固定賃料を支払うというもの。パネルは1枚あたり6.5万円で、10年間で総収入は8.4万円となる。
双方の代表に共通する思いは、「都会と地域の交流を促したい」ということ。市民エネルギーちばの代表社員、東光弘氏は、「地方の人口流出は行政の破たんにつながりかねない。千葉県内の農村地域でも、85%の女性が都市部に移住するという数字があり危惧している。ソーラーシェアリングが地域と都市をつなぐコミュニケーションツールになれば」と思いを話す。
東氏は、「現在メガ級のソーラーシェアリングの建設を計画中で協議会を立ち上げた。ただし一農業者では耕作の負担もプレッシャーも大きい。農業生産法人を作って、耕作する人を確保する必要がある。発電事業者が得た売電収入の一部を、耕作協力金という形で農業生産法人に支払う形態を考えている。法律の精査が必要だが、農家の2代目が農業を継ぎたいと思い、また都会の人も農地に訪れる、この循環を作っていけるよう取り組む」と語った。