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出力抑制 新ルールに対応

田淵、パワコン一括制御機を提案

出力抑制のルール改定に伴い、PCSメーカーが対応機の開発を検討し始めた。小型PCS大手の田淵電機は、複数のPCSを一括制御できる独自の装置に遠隔制御機能を追加する方向だ。新ルール適合品を早期に市場投入する構えである。

マスターボックス

太陽光発電から系統に流れる電力量が増え、管内の供給量が需要量を上回る恐れが出た場合、電力会社は太陽光の出力を抑制できる。これまでは500kW以上の太陽光発電所が対象で、年間最大30日という日単位の出力抑制だった。電力会社から指示を受けた電気主任技術者がPCSを手動でオン・オフするアナログな手法で間に合った。

今回のルール改定で、出力抑制の対象が住宅用まで拡がり、日単位から時間単位の抑制に変更されると、電力会社側でPCSを遠隔操作する体制を整える必要がある。PCSメーカーは新たな機能を追加した製品を開発しなければならなくなった。

PCSにはマイコンが内蔵されており、エラーが発生した日時を後で確認できる。この機能を活用し、ソフトの一部を変更してスイッチング機能を付ければ、予め指定した日時にPCSの運転を制御できる。外付けの専用の機器も市販されているため、いわゆるカレンダー抑制は、比較的容易にできるようだ。

しかしこの手法も手動制御が前提となる。50kW以上の設備であれば電気主任技術者が対応すればよいが、「50kW未満の設備は誰が操作するのか。もちろん時間単位の出力抑制は物理的に難しい」(大手EPC筋)。いずれにせよ、電力会社が遠隔でリアルタイムに出力制御できる体制づくりを進めなければならない。

とはいえ、実際PCSの遠隔制御は可能なのか。

住宅用の小型PCSには、系統の電圧が上昇した場合に自動で出力を抑制する機能がある。一部のPCSは、発電状況を外部モニタで確認できるようにリモートコントローラを搭載している。これらと通信インフラがあれば、PCSの遠隔制御は技術的には可能という意見もある。

田淵電機パワーエレクトロニクス事業推進本部統括部長の坂本幸隆常務執行役員は、「リモコンと通信を繋げば遠隔制御できる。ただセキュリティ上、家庭のインターネット通信を使ってよいのか。あるいは自動検診を目的に電力会社が設置しているスマートメータを使う手もある。スマートメータとPCSと交信させればよい。もちろんスマートメータが完備されていないので時間はかかるが」。

一方、産業用のPCSには、出力を自動制御する機能がついていない。「リモコンのように、外部からPCSに運転停止の信号を送る媒体も必要になる」(坂本常務執行役員)。遠隔監視システムを導入している発電所であれば、通信インフラを活用できるが、すべての発電所に設置されているわけではない。PCSメーカーの開発期間も考慮すると、環境整備には一定の時間がかかりそうだ。

しかし坂本常務は、「当社の産業用PCSは自動で出力を制御できる。当社のPCSは小型分散型なので、ネックは整定値の設定などに手間がかかることだった。そこで昨年、中小型PCSを最大32台まとめて制御できる『マスターボックス』という製品を開発していた」とし、「マスターボックスに遠隔制御機能を導入すれば、今回のルール改正にも対応できる。省令で正式に決まれば、新ルール対応機の開発を進めていく」と語った。

田淵電機の坂本常務執行役員

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