日建設計、岐阜県内の中学校でZEB達成
建築設計を手掛ける日建設計(東京都千代田区、亀井忠夫社長)は2020年11月30日、岐阜県瑞浪市内に建設した中学校が19年9月からの1年間でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)を達成したと発表した。同社によれば、幼稚園を除き、日本の学校施設で初のZEBだという。
同社が設計し、19年4月に開校した瑞浪北中学校について、日建設計総合研究所と共同で調査した。まず瑞浪北中学校と同規模の学校の年間エネルギー消費量を1㎡あたり364MJと試算。そのうえで、中部電力との売電契約が始まった19年9月から20年8月までの1年間における購入電力量や再生可能エネルギー機器の発電量を計測し、校内の一次エネルギー消費量を調べた。その結果、省エネルギー化と再エネによる創エネルギー化によって一次エネルギー消費量を1㎡あたり103MJにまで抑え、さらに余剰電力の売電分が同105MJあったことからZEBを達成したと判断した。
設計に際しては、瑞浪市の文化遺産である登り窯をモチーフにした自然換気設備や地中熱利用設備、LED照明器具、高効率エアコンの導入などによって省エネ化を図り、太陽光発電設備を計120kW、風力発電設備を1kW、ペレットストーブを3kW設置した。
設計部門の小谷陽次郎ダイレクターは、「各教室にモニタを設置し、生徒に窓を開けたり照明を消したり促すことができる。すべてAI(人工知能)による自動制御も可能だが、生徒が自発的に取り組むことに意味がある」と語る。
エンジニアリング部門設備設計グループの田中宏明シニアダイレクターは、「20年はコロナ禍による4~6月の登校制限で、その間の電力使用量は大きく減ったが、夏季休暇の時期に授業が実施され、結果的に4~8月の消費電力量は昨年よりも増えた。コロナ禍ゆえZEBが達成されたわけではない」と説明する。
瑞浪北中学校は、瑞浪市内公立中学校の統合再編に伴って誕生した新築の中学校だ。延べ床面積は約8000㎡で、市内350人の生徒が通う。瑞浪市が、文部科学省の『スーパーエコスクール実証事業』の採択を受け、設計・施工を日建設計に依頼した。スーパーエコスクールとは、省エネ化の徹底と創蓄エネルギー設備の導入によってエネルギー消費を実質ゼロにする学校を指す。容量20kWhの蓄電設備を備え、防災拠点の役割も果たす。
同社は東京スカイツリーを始め、多数の建造物を設計してきたが、完全なZEB化の達成は今回が初めて。