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旭ダイヤモンド工業、ダイヤワイヤV字回復 売上60%増50億円

今期過去最高か

(左)ワイヤ表面(右)電着ダイヤモンドワイヤ

ダイヤモンド工具大手の旭ダイヤモンド工業(東京都千代田区、川嶋一夫社長)は、太陽光向けのダイヤモンドワイヤの販売がV字回復している。2012年度の売上高は前期比44%減の31億円に落ち込んだが、13年度は同比60%増の約50億円。今期は海外需要の高まりを受け、10年度の59億円を超える過去最高の83億円を見込んでいる。

同社の主力製品、電着ダイヤモンドワイヤは、シリコンインゴットを切断してウエハに加工する際に使用する製品である。

一般に、インゴットの切断は、ワイヤソー(シリコンインゴット切断装置)と呼ばれる専用装置に、砥粒を付着させたワイヤを装着し、ノコギリのように削りながらスライシングしていく手法が採られている。このときワイヤの刃となる砥粒の違いによって、遊離砥粒方式と固定砥粒方式の2つに種別され、従来は、SiC(シリコンカーバイド)などの砥粒をワイヤに流し込みながら切断する遊離砥粒方式が主流だった。

しかし、ここ数年、ダイヤモンド砥粒を付着させたワイヤで削る固定砥粒方式の開発が進み、加工時間を短縮できるなど、生産性が向上することから、インゴット・ウエハメーカーの間では固定砥粒方式を採用する企業が増えている。

これについて、経営戦略企画本部の香山盛夫副部長は、「固定砥粒方式は、遊離砥粒方式と比べると高価だが、切り代や加工歪が低減されるため、ウエハ製造において歩留まりが向上する。加工時間もおよそ2分の1から3分の1に短縮されるなど、品質向上とトータルコストの低減化に繋がる」という。

こうした市場の変化に乗って、同社はダイヤモンドワイヤの販売を強化してきたが、12年以降、欧州でのFIT(固定価格買取り制度)の見直しや過剰供給による在庫調整などの影響でパネルの価格競争が激しくなると、同製品も価格の見直しを迫られた。10年に比べると単価は半分ほどになったという。その影響もあり、12年度の同社の売上高は前期比44%減の31億円に落ち込んでいた。

それが13年度から好転する。同社は海外市場への販売を強化し、12年度まで60%ほどだった海外向けの比率を85%まで高め、売上を大きく伸ばした。

香山副部長は「中国は価格面などからも遊離砥粒方式が多いが、台湾や韓国、マレーシアなどでは、他社との差別化を図る目的で固定砥粒方式を選択する企業が増えており、そこに向けて提案を強めてきた。最近は、中国でも新規参入する企業は固定砥粒方式を選択することもある」と状況を述べた。

同社は14年度、海外比率を90%以上と、さらに伸ばしていく方針だ。

販売増加に伴い、同社は現在、三重と千葉にある工場の生産能力を現在の約1.2倍に増強する。今年上期中の完工を目標としている。

今後の市場について、香山副部長は「現在、固定砥粒方式を採用しているのは7~8%くらい。10年後には新規参入の企業や、遊離方式から固定方式への設備切り替えなどによって20~30%になるのでは」とし、「当社は、電着ワイヤでは世界の50~80%のシェアを持つ。我々の強みは高品質な電着ワイヤを大量に生産できる能力があること。また、様々な機械があり、顧客の要望もあって、トラブルに対する対応やノウハウを提供できること」と語った。

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