翳る既築住宅マーケット
岐路に立つ地域販売店
住宅用太陽光発電システムの販売店が岐路に立たされた。翳る既築住宅設置と活況の産業用市場。今のところ出力50kW未満のシステム販売で経営を切り盛りしているが、それもいつまで続くのか。先行き不安を抱える販売店の実態が浮き彫りになった。
神奈川県小田原市に本拠を構える地域販売店、J・システムの沖紀和社長は眉を顰めながらこう語った。
「もはや既築住宅市場に成長はない。震災直後と比べて明らかに太陽光への意識が冷めている。少なくとも神奈川県内は頭打ちだ」。
ある販売店主は、「ネット上で一括見積りするサイト。あれが登場したせいで住宅用は価格が暴落した。利益の出ない住宅用では食べていけない」と嘆く。
川崎市のインテグレータ、イスズの鈴木修一取締役は、「新築分野に商機があるといわれても、値下げ要求はさらにきつい。食い込めるのはメーカーか、一部の有力会社だ」。
この状況下、今年3月末に補助金が停止し、4月から消費税率が8%に上がる。既築住宅への導入はさらに減速し、冷え込む可能性もある。〝太陽光バブル〟に乗って急成長を遂げる大手企業の姿とは対照的に、中小販売店には厳しい現実が待ち受ける。
その彼らにも救いがあった。出力50kW未満の〝アンダー50〟だ。需要が旺盛なうえ、住宅用システム販売の延長線上で展開できる。販売店の多くは、アンダー50へ活路を見出したが、ある大手EPC首脳はこう指摘する。
「住宅用はメーカーがシステムを保証していたから成立していた。アンダー50は規模こそ小さいが、建設業者がユーザーの発電を担保しなければならない。しかも20年だ。それを販売店が担えるか」。
ただ、販売店のなかにも展望を描ける企業も少なからず存在する。とりわけ〝自社施工〟と〝地域密着〟に努めてきた企業に多い。
先のJ・システムは、建設業や電気工事業の許認可を取得し自社施工体制を整えた。それだけに、産業用では50kW未満にとどまらず高圧線接続のミドルソーラーやメガソーラーまで受注している。
既築住宅向けの販売は月間30件と一時期の半数に低迷したが、産業用がその落ち込みを補てん。同社の14年7月期の売上高は前年比横ばいの8億円を維持する見通しだ。
老舗販売会社のケイアンドエム(地主光滋会長)は、買取り価格の減額に伴う値下げ販売で売上が目減りしたが、販売数は伸ばしている。14年3月期の売上高は約11億円と前期比微減で推移した。
同社はO&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)に力を入れ、販売・施工・保守の一貫サービスを提供、地域に根差した事業基盤を築いている。
変化の絶えない太陽光発電市場。既築住宅市場ではすでに厳しい競争が繰り広げられている。今後買取り価格が減額されれば、産業用市場の潮目も変わる。資本力に限りのある中小販売店は、難しい経営の舵取りを迫られる。