被災地の公衆衛生に貢献 太陽光搭載トイレトレーラー
能登半島地震の翌日、太陽光パネルを搭載した移動式水洗トイレ、トイレトレーラーが出動した。被災地の公衆衛生に貢献している。
「トイレは生活に欠かせないものだが、衛生状態を清潔に保てなければ、意味はない」。そう話すのは一般社団法人、助けあいジャパンの矢野忠義氏である。
同団体は、災害用の移動式水洗トイレを牽引するトイレトレーラーの導入を支援し、静岡県富士市や西伊豆町、新潟県見附市、千葉県君津市、山梨県北杜市、愛知県刈谷市、京都府亀岡市など計20の自治体に1台ずつ納入してきたが、それらが能登半島地震の被災地で活躍したのだ。
地震翌日の2024年1月2日、京都府亀岡市のトイレトレーラーが石川県七尾市に着くと、各自治体より派遣されたトイレトレーラー計20台が石川県輪島市や珠洲市、能登町などの避難所に到着。下水処理機能が復旧するまで被災地に滞在し、公衆衛生に貢献している。
トイレトレーラーには、給水タンクと汚水タンクがあり、それぞれ満タンと空の状態であれば、汚水タンクが満タンになるまで延べ1500回程度のトイレ利用が可能だ。トレーラーの屋根に搭載された太陽光パネルは室内照明の電源になるほか、給水ポンプでタンクに給水するための電源として機能している。トレーラーの内部には4つの個室トイレがあり、洋式便座や手洗い台、換気設備が設置、停電時でも利用者は快適にトイレを使用できる。
上下水道の機能が停止し、断水と停電が長引けば、衛生環境は悪化する。助けあいジャパンの矢野氏によれば、「仮設トイレで水が流せなくなり、衛生が悪化して感染症が蔓延することもある」という。
なお、トイレトレーラーは西日本豪雨の被災地である岡山県倉敷市や、千葉台風の被害が甚大だった千葉県君津市にも派遣されたという。これについて矢野氏は、「トイレトレーラーの導入は18年からの取り組みで、導入件数は伸びたものの、まだ不足している。今後は太陽光パネルのサイズ拡大も検討している」と語る。
日本は災害大国だ。不運にも自然災害に見舞われた自治体は自力での復興は難しく、他の行政の支援が欠かせない。ならば各自治体はトイレトレーラーを導入するべきだろう。1台の導入費約2000万円の7割は、総務省消防庁の『緊急減災・防災事業債』を活用できるため、実質3割負担の600万円程度の支出である。〝助けあい〟の設備投資だ。