日揮、モンゴルで蓄電設備併設メガソーラーのEPCを受注
プラントエンジニアリング大手の日揮ホールディングス(佐藤雅之会長)は2021年3月22日、子会社の日揮グローバルがモンゴル国から蓄電設備を併設するメガソーラー案件のEPC(設計・調達・建設)を受注したと発表した。NAS蓄電池メーカーの日本ガイシや蒙建設大手のMCSインターナショナルと建設し、22年春の完工を目指す。
同社は、モンゴル国の首都ウランバートルから1100㎞西にあるサブハン県ウリアスタイに、出力5MWの太陽光発電設備と、日本ガイシ製の蓄電容量3600kWhのNAS蓄電設備を設置する。4月上旬に着工した。完工後はMCSが運営していく。
今回の蓄電設備併設メガソーラーの入札には、日揮ら以外に、中国系企業のグループが9組とフランス系のグループが1組の計11組参加したという。他の10組がリチウムイオン蓄電設備を用いるなか、同社らはNAS蓄電設備を活用する計画を立案して落札した。
日揮グローバルファシリティインフラストラクチャーソリューションズ発電・再エネユニットの山本明彦ユニットリーダーは、「モンゴルの冬は非常に厳しく、ウリアスタイはマイナス40℃になる。リチウムイオン蓄電池は暖房で温めた室内でなければ使えないが、NAS蓄電池は元々ヒーターで蓄電池を300℃に過熱して稼働させる。1日1回の充放電を繰り返すと、熱を常に維持し、省エネルギーに繋がる。こうした強みが評価された」と話す。
今回の案件の総事業費は795万米ドル(約8.58億円)。うち500万米ドル(約5.4億円)は日本政府の2国間クレジットによるものだ。これは、日本が脱炭素社会の実現に寄与する技術や製品を、日本側の資金負担で途上国に提供し、途上国の温室効果ガスの削減などに貢献したうえで、その成果を2国間で分け合う制度である。2国間クレジット以外の費用は、アジア開発銀行の融資やモンゴル国側の自己資金が充てられる。
電力を石炭火力発電に依存しているモンゴル国では、大気汚染が深刻なうえ、電力需給が逼迫すると、ロシアから調達しなければならない。太陽光発電設備や蓄電設備でこうした課題の解決を図る考えだ。
山本ユニットリーダーは、「冬場の屋外工事は難しく、10月までに終わらせなければならないが、コロナ禍でなかなか人材が集まらない」とし、「ラミング工法で工期を短縮しつつ、地中に埋設するケーブルを杭から離してケーブル敷設が遅れても杭工事に影響がないようにするなど工夫していく」と方針を述べた。
日揮はこれまで海外含め1GW超の太陽光発電所を建設してきたが、蓄電設備を併設する案件のEPCは今回が初めて。日揮グローバルファシリティインフラストラクチャーソリューションズセールスユニット1の山口剛史ユニットリーダーは、「蓄電のニーズはどの国でも伸びる。今回の案件を足掛かりに、世界中で実績を積んでいきたい」と抱負を語った。