グリッド、系統用蓄電事業に参入
AI(人工知能)技術開発のグリッドは2024年8月15日、系統用蓄電事業に参入すると発表した。開発中の蓄電池の充放電を最適化するAI制御システムを活用し、蓄電所の開発から運用支援まで手掛けていく構えだ。
同社は、協力企業と連携して系統用蓄電所を開発し、運用していく。24年8月19日にはEPC(設計・調達・建設)大手のウエストホールディングスとの業務提携を発表、系統用蓄電所の開発から運用までを展開する体制を整え、両社で27年度までに80万kWh規模の蓄電所の開発を目指す。
もっとも、同社は蓄電事業への参入に際し、開発業者やEPC企業、発電事業者などと協業する方針を掲げており、ウエストHDはその1社という位置づけだ。同社事業開発部の角知亮事業開発グループリーダーは、「現在、高圧用60件、特別高圧用40件の候補地を精査中だ。協力企業を増やしていく」と明かす。
09年設立の同社は太陽光パネルの製販や太陽光発電事業を展開していたが、20年に撤退し、社会インフラ向けのAI技術開発に特化した。電力大手向けに需給計画の策定を最適化するAIエンジンを開発しているほか、23年11月にはAIを活用した蓄電池最適制御エンジンの開発開始を発表。後者の制御エンジンを系統用蓄電事業で活用する予定で、市場価格や電力需要などの予測データを踏まえ、最適な充放電計画を立案する。角グループリーダーは、「複数のシナリオを策定し、期待収益などを比較できる点が特徴だ」という。
同社の中村秀樹取締役事業開発本部長は、「今後VPP(仮想発電所)や発電所併設など、蓄電池活用の複合化が進むことを想定すると、系統用蓄電事業は入口だ。知見を蓄積して商機を掴みたい」とし、蓄電設備やEMS(エネルギー管理システム)などの設備一式の提案と運用代行を合わせた関連サービスの提供も視野に入れるようだ。
なお、同社は23年10月に東京証券取引所グロース市場に上場。24年6月期は売上高が前期比22%増の16億5200万円、純利益が76.7%増の4億300万円だった。