東京太陽光建材、両面受光型モジュール販売
発電量20%アップ
太陽電池モジュールメーカーの東京太陽光建材(東京都台東区、仁村利尚社長、TSBM)は、自社製の両面受光型モジュールの提案を強めている。両面受光により、片面受光型に比べて発電量が10〜20%上昇するといった特長を活かし、発電事業向けに拡販していく。
両面受光型モジュールとは、表裏両面で発電する太陽電池。最大の特長は、裏面で反射光や散乱光を採取し、発電することにより、一般的な片面受光型に比べ、発電量が上昇する点である。ただ、これまでも一部のメーカーによって生産されてきたが、価格が割高で普及が進まなかった。
同社のモジュールは、p型基板の単結晶シリコン型セルを採用、セル製造ラインで特殊な加工を必要としないほか、モジュール部材も汎用品を使用している。裏面には透明タイプのバックシートを採用した。それだけに、金香佑典常務取締役は「欧州及び国内製の片面受光型の単結晶シリコン型モジュールと遜色ない価格を提案できる」とコスト面でも自信を見せる。
モジュール出力は240W(モジュール変換効率14.6%)、245W(同14.9%)、250W(同15.2%)。ただ、これはモジュールの表面のみの発電性能である。同社のモジュールは、ドイツのフラウンホーファー研究機構の下で多結晶シリコン型との比較試験を行った結果、年間発電量が約20%アップ、特に積雪の影響が大きい2月は50%以上の発電量上昇を記録している。
金香常務は、「裏面受光により20%アップする場合、出力250Wタイプだと実質300Wになる」という。
裏面受光による発電量上昇には、地面反射率がポイントとなる。発電量上昇率は、落葉/アスファルト10%から、白色コンクリート20%強まで地面の状態によって変化する。金香常務は、「日本の工場などで多く採用されている白色塗装屋根に設置すると、地面反射率が高い上、屋上表面温度の低減効果も生まれる」と地面反射率も考慮した設置を推奨する。
栃木に730kW発電所建設へ
TSBMは、日本のウエハメーカーであるスペースエナジーの創業者、仁村利尚氏によって2010年11月に設立された。両面受光型太陽電池のほか、ポリシリコンやインゴット、ウエハなどの販売も手掛けている。
現在、同社製モジュールは、TSBMが調達した単結晶シリコンウエハを、イスラエルのセルメーカー、bソーラーがドイツで両面受光型セルを製造する。これをドイツにあるTSBMのOEM(他社ブランドでの生産)工場でモジュール化し、生産している。現在、TSBMは自社モジュールのテュフ認証を取得中だ。なお、同社はbソーラーに約10%出資しており、日本独占販売権及び中国優先代理権を持つ。
また同社は今年、2億円以上投じて栃木県那須烏山市の七合中学校跡地約9000㎡に発電容量730kWの太陽光発電所を建設することを決めた。自社製モジュールを使用することによって、採用実績を挙げる狙い。8月にはEPC(設計・調達・建設)企業などを選定し、9月以降に連系協議に入る予定だ。
金香常務は「今回は、自社モジュールの実績を残すために発電事業者となったが、基本的にはモジュールメーカーとして製品を供給していく。3年間で日本と中国向けに100MWの出荷を目指す」とし、今後は、「性能アップとコストダウンを両立していく。将来はモジュール製造拠点を中国などに置く可能性もある」と話す。
なお今年8月には神奈川工科大学と共同で、同社製両面受光型モジュールと国内メーカー製の多結晶シリコン型モジュールの比較実証を開始した。