会津コンピュータサイエンス研究所らAI蓄電設備の実証開始
AI(人工知能)などの開発を行う会津コンピュータサイエンス研究所(福島県会津若松市、久田雅之所長)は2021年5月25日、会津大学でタイ大手電力会社の日本法人バンプージャパンらとAIチップを搭載した蓄電設備と太陽光カーポートの実証試験を始めた。ブロックチェーンを活用して電力〝見える化〟の要素技術の確立を目指す。
実証試験では、まずAIチップ搭載の蓄電設備を備えたカーポートと一般の蓄電設備付きカーポートを比較し、AIチップ搭載蓄電設備の機能を検証する。
クラウド利用が前提のAIは、災害時の通信遮断や大量のデータ処理による電力消費の増大が課題。AIをチップ化し、蓄電設備に実装すれば、現場で瞬時に応答できるうえ、電力消費を抑制でき、災害時もAIの機能を維持できる。
実証試験のAIチップはFPGAと呼ばれる回路の書き換えが可能な半導体を使う。ただFPGAは回路の修正や改善ができない専用のカスタムチップに比べて割高。同社によれば、最終的にはカスタムチップを量産する流れになるという。
同社の久田雅之所長は、「FPGAは1個数万円だが、カスタムチップは数百円。ただAIチップをカスタムチップで量産化するのは書き換えができないためリスクが伴う。そもそもAIチップを蓄電設備に組み込むのも容易ではない」と語る。
実証試験では、ブロックチェーン技術も開発する。太陽光発電の発電量や蓄電設備の放電量をブロックチェーンに書き込んで電力の動きを細かく追跡するためだ。ただデータを細かく記録すれば、量が膨大になりコストが嵩む。またブロックチェーンはクラウド利用が前提ゆえ、災害時に情報が遮断されかねない。そこで管理するデータの最適量やブロックチェーンシステムそのものも検証する。
久田所長は、「電力を見える形で追跡できれば、電源毎に価格を変えたり、電力の需要によって料金を変えたり、環境価値の売買まで可能になる」と展望を話す。
実用化できれば、変動料金制を取り入れたEV(電気自動車)向けサービスや電力市場取引など、分散型電源の活用が広がる。同社は、VPP(仮想発電所)や電力市場での活用を視野にアグリゲータなどに要素技術を提案していく考えだ。