世界最高クラスの高速スイッチング動作で、かつIGBT保護機能内蔵の IGBTゲート駆動用フォトカプラを発売
2013.01.31
ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび産業機器や太陽光発電システム用のインバータ向けに、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)保護機能を内蔵したフォトカプラ 「PS9332L/L2」を製品化し、2月よりサンプル出荷を開始いたします。
新製品は、(1)IGBTの誤動作を防止するアクティブミラークランプ回路(注2)を内蔵、(2)IGBT保護機能を内蔵したIGBT駆動用フォトカプラとしては、世界最高クラスの高速スイッチング(当社従来製品比20%高速化)の実現、(3)8ピンSDIP(Shrink Dual Inline Package)(注3)の小型パッケージを採用、(4)高温動作保障の実現、等の特長を有し、モータ制御などのインバータ回路に使用されるIGBT素子の誤動作を防止しつつIGBT素子のゲートを駆動できるフォトカプラです。
新製品は2013年度上期より量産を開始し、同年10月には100万個を生産予定です。
<背景>
インバータ回路など、比較的大電圧を扱う回路を設計するにあたっては、フォトカプラ等の絶縁素子を用いて回路保護を行うことが一般的です。
フォトカプラは、入力側に電気信号を光へ変換する発光素子(LED)と、出力側に光を電気信号へ変換する受光素子をひとつのパッケージに封入しており、信号の伝達を光で行うため入力側と出力側が電気的に絶縁される仕組みをもつ光結合素子です。フォトカプラの種類としては、電源用途などに使用される汎用フォトカプラ(トランジスタ出力)や太陽光発電や汎用インバータなどで使用されるIGBT素子のゲートを駆動するIGBT駆動用フォトカプラなどがあります。
今回の新製品は、このIGBT駆動用フォトカプラのひとつで、発光素子であるGaAlAs(ガリウム・アルミニウム・ヒ素)LEDと受光IC、ならびにIGBT保護用回路で構成され、IGBT素子のゲートを駆動すると同時にIGBT素子が誤動作した際にIGBT素子の故障を保護する機能(アクティブミラークランプ)も内蔵しており、従来外付け部品で構成されていた保護機能が内蔵されることにより、システム設計が容易になり、小型化が可能となります。
<特長>
新製品の主な特長は、次のとおりとなっております。
(1) IGBTの誤動作を防止するアクティブミラークランプ回路を内蔵
フォトカプラに接続されるIGBTのオフ動作の際に、コレクタ-ゲート間容量に流れる電流(ミラー電流)により、ゲート電圧が発生し誤動作を起こすことがあります。しかし、アクティブミラークランプ回路を内蔵することで、ミラー電流を吸収し、ゲート電圧の上昇を防げるため誤動作の防止が可能です。この保護回路の内蔵により、システム設計の容易化と同時にシステムの小型化に貢献します。
(2)世界最高クラスの高速スイッチング(当社従来品比20%高速化)の実現
ルネサス独自のBiCMOSプロセスを受光ICに採用することで、寄生容量(注4)の低減を行い、遅延時間を短縮(tPHL、tPLH≦200ns、対従来製品比20%高速化)するとともに回路の消費電流も低減します(Icc≦2.5mA)。これによりインバータ制御回路の精度向上および低消費電力化を実現すると共に、回路の消費電流を低く抑えたことでIGBTを駆動するシステム内の電源の小型化が可能となります。
(3)8ピンSDIPの小型パッケージを採用
受光チップサイズをアクティブミラークランプ機能内蔵にもかかわらず従来品同等サイズに収めたことで 8ピンSDIPの小型パッケージを適用しました。その結果、8ピンDIPと比較して実装面積が40%低減可能となり、お客様のシステムの小型化に貢献します。
(4)高温動作保証を実現
使用部材を高温動作に適した材料に改良することで最大動作温度(125℃)を実現しており、高温環境下で使用できるためシステムの熱設計が容易になります。
ルネサスは、新製品を今後スマート社会の実現に向け、さらなる市場成長が期待されるインバータ機器の開発容易化および小型化に貢献できるものと位置づけ、積極的な拡販活動を展開するとともに、高温・高速・高出力対応の製品開発を推進してまいります。また、新製品のサンプル価格は1個あたり160円となっております。
なお、当社のIGBTと本製品を組み合わせてご使用頂くことにより、スイッチング時のデッドタイムを約10%短縮可能(当社従来製品比)となり、電力効率向上を実現できます。また、本製品とIGBT及び、マイコンとのキットソリューションのご提案として、パワーコンディショナーやインバータ用途に向けたリファレンスボードを準備しております。今後ともお客様の開発サポートを充実して参ります。