[特別対談第22回]企業存続の条件 ウエストホールディングス吉川隆会長×ESI土肥宏吉社長

2018.03.01

PVeyePR

 ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長と業界のキーパーソンによる対談。今回のお相手は、太陽光発電のEPC(設計・調達・建設)大手、ウエストホールディングスの吉川隆会長。企業存続の条件について意見交換した。

土肥氏●太陽光発電の専業会社で株式上場され、ビジネスモデルや成長性も含め、貴社はリーディング企業として業界を牽引されています。そこで今回は、いよいよ厳しくなってきたいま、太陽光関連企業が生き残るためには何が必要か、お伺いできればと思います。
 最近は、海外でも事業を展開されていらっしゃいますが、その辺りから状況をお聞かせください。

吉川氏●タイでは、現地に進出している日本企業に省エネ機器を販売・施工しています。今春から太陽光発電設備の販売・施工も始めます。今後はタイからアジアへ展開していくつもりです。

土肥氏●貴社は、時代の変化に合わせて、いち早く新規事業を立ち上げ、業容を変えながら成長されているようにお見受けします。貴社の規模で常に変化していくというのは、並大抵のことではないように思いますが、軸となるビジネスモデルは何なのでしょうか。

吉川氏●提携のビジネスモデルです。海外展開も、バンコクの情報紙や金融機関との提携が基盤です。
 私は建材の卸売りの事業から始めたので、BtoC事業の経験はありませんでした。卸売りを通して販売業者の方々と出会い、皆さんの販売力に感服していたのですが、不思議と事業が継続しないのです。そこで販売業者の方々に販売のプラットフォームを提供し、そうこうしているうちに当社の設立に至ったという経緯があります。
 消費者へ直接提案する販売手法に課題を抱えていたので、当初はプロパンガス販売店や新聞販売店といった消費者と接点のある会社と提携し、その会社の信用力をお借りして事業を進めました。
 このビジネスモデルを30年も続けると、提携会社の先にいらっしゃる消費者のニーズが時代とともに徐々に変化するのに気づきます。たまたま遭遇したのが太陽光発電だったというわけです。

土肥氏●貴社が提携先のさらに先にいる消費者のニーズまで汲み取られて、提携先の利益に資するように、ウィン・ウィンの関係を築かれたからこそ、実現するビジネスなのでしょうね。では今後の市場動向をどのように見ていらっしゃいますか。太陽光発電市場はFITを活用した売電というニーズが拡大しましたが、今後は、自家消費や蓄電池、電力小売り、省エネなどへ変化していくと思われます。

吉川氏●太陽光発電は、電力会社から電力を購入する価格と充分競争できる価格帯まで設備の価格を下げていかなければなりません。結果として住宅用も産業用も自家消費でしょう。ただ品質も重要です。品質を維持しつつ、価格低減をどこまで進めていけるか。それがすべてでしょう。
 電力小売りは厳しい。今年9月に東京商品取引所が電力先物を上場するので、好転する兆しもありますが、電力卸売市場が未成熟なので、新電力会社の息がどこまで続くか心配です。とはいえ、国はいずれ競争できる環境を整えると思います。電力会社と新電力会社が競争する市場が形成されなければ、電力市場を自由化した意味がなくなりますから。
 省エネは拡大するでしょう。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が進化すれば、センサが温度や人体を感知し、自動制御によるエネルギー利用の最適化が実現します。
 LED照明や空調機器といった従来型の省エネ機器だけでなく、より効果のある省エネシステムを提供していく方向になるでしょう。

土肥氏●蓄電池の動向を見て思うのは、最初は日本がリードしていても、パネルメーカーの勢力図の変化と同様に塗り替わり、いまは韓国や中国のメーカーが台頭しています。設備や機器といったハードは海外勢が強く、日本の企業はビジネスモデルで差をつけていくべきなのではないかと考えてしまいます。

吉川氏●中国の深圳に行けばハードは揃っています。土肥さんがいわれるようにビジネスモデルが重要だと思います。変化の激しい太陽光発電の世界では、ハードも重要ですが、、ハ―ドを用いた新たな価値創造が問われていると思うからです。
 たとえば、当社は北海道から九州まで300ヶ所の太陽光発電所のO&M(管理・保守)を手掛けていますが、これらを管理していると、気象条件の異なる発電所のデータが多数蓄積されます。これらのデータを活かせば、地域性も踏まえた最適な設備の選定や設計を考案し、今後発電所を開発される方へ提案できるのです。さらには、発電所の発電量は初期の値から徐々に下がりますが、初期の発電量を維持し、できれば発電量を高めていく技術の開発です。これこそO&Mの真髄で、新しい価値だと思います。

土肥氏●最後に、企業存続の条件をどのようにお考えですか。FITの導入を機に拡大した企業がある一方、私などは臆病者で、不景気の波を恐れ、人を増やさずに協力企業と関係を構築してきました。もっと大胆に事業を拡大しておけばよかったとも思う次第ですが。

吉川氏●臆病でないと、経営者は務まらないと思います。一流会社の経営者は、一方ですごく臆病です。だから会社を維持できるのです。
 企業が存続するかしないか、それは〝人財〞次第でしょう。
 「当社は何が得意で、何を成すべきか」、コアの事業を明確にし、そのコアの事業は当然〝人財〞が担うので、育成には力を入れる。ただ、コアの事業以外は、協力会社にお任せするのです。内製化して利益を独占するのではなく、シェアするのです。
 形にこだわると、形を維持しようと無理をして、形に苦しめられます。会社は形ではなく中身、100%〝人財〞です。そして〝人財〞は少数になれば精鋭になるのです。

土肥氏●本日は、市場の動向からビジネスモデルや会社経営まで、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーション株式会社
〒100-6512‌ 東京都千代田区丸の内1-5-1‌新丸の内ビル12階
TEL:03-6757-9065‌‌
FAX:03-6757-9066‌‌
http://www.e-solar.co.jp