「〝緑の回復〟を追求せよ」自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟事務局長秋本真利 衆議院議員
2020.07.01
PVeye
改正FIT法やコロナ禍は再エネの普及にどう影響するのか。自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務める秋本衆議院議員が展望を語った。(聞き手・岡田浩一)
コロナ禍で電力の安定供給が損なわれるリスクが露呈した。実際、コロナ対策で人と人との接触を減らさなければならず、従来通りの運用が一部困難になった。報告こそされていないが、仮に発電所内でクラスターが発生した場合、その炉を安定的に動かせるのか。
今後は南海トラフ地震や首都直下型地震の発生も想定しなければならない。リモート会議やテレワークで思いのほか業務を遂行できることが分かったこともあって、経済活動は地域に分散し、エネルギーも大規模集中型から小型分散型が求められるようになるはずだ。政府としても、今回の法改正で分散型電源を拡大する意向を示した。電気という生活に欠かせない必需品を地域産業として発展させることで、地域経済の活性化にもつながるはずだ。
今後の日本のエネルギー社会を考えるうえで、『グリーン・リカバリー(緑の回復)』、つまり環境に配慮した投資が大前提となる。近年はESG(環境・社会・企業統治)投資やSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、再エネ投資へのインセンティブが働くようになった。対コロナの景気対策だからといって経済再建を優先し、環境に配慮しないという考えは通用しない。むしろ経済合理的に考えても再エネ投資は有益なのだ。
すでに太陽光発電や風力発電はkWhあたりの発電コストが1ケタ円台に近付いている。一方で原子力発電は建設済みのものであれば10円/kWh強という試算もあるが、安全対策や地域の理解を得ることが必須だ。原発も環境負荷が低い電源と言われており、既存のものを使うというのは仕方のないことかもしれないが、少なくとも原発の新設に関しては、安全対策にかかる莫大な費用や事故のリスクを背負ってまで進めるべきとは到底思えない。
火力発電も、たとえばCCS(CO2分離回収・貯留技術)付きにする案もあるが、そうすればkWhあたりの発電コストは少なくとも18円になると聞いている。価格競争力の観点から原発と同様にフェードアウトしていく電源になるだろう。
30年時再エネ比率44%へ
再エネには〝変動〟という弱点がある。この課題に対しては、蓄電池や水素などの蓄エネ技術を高め、コスト低減していくほかない。
再エネ電源の普及拡大に関しては、自家消費用と事業用の太陽光発電で進めていくのが主流であるが、とりわけ、一般海域での事業化が可能になった洋上風力発電は、まさにこれから普及に力を入れていくべき電源であるように思う。
欧州ほどではないにせよ、日本には風況のいい場所が多い。ただ遠浅の海面積が少なく、安価な着床式で建設できる場所は限られているので、まずは着床式から建設を進め、その間に浮体式の価格低減に取り組むことになるだろう。遠方で風力発電所を建設する場合、送電コストが多く発生することになるが、たとえば、現地でためて運ぶ方法も考えられる。その点でも蓄エネの技術革新が求められている。
『エネルギー供給構造高度化法』によって、2030年時点に非化石電源比率を44%以上に高めることが義務づけられている。原発の先行きが不透明ななかで、私は以前から再エネだけで非化石電源比率44%を目指すよう訴えてきたが、その考えはいまも変わらない。
間もなくエネルギー基本計画の議論が始まるが、30年時の電源構成の目標値も再エネ比率44%まで引き上げるべきである。