自然エネルギー財団 太陽光発電の買取り価格に提言 「10〜50kW未満」は区分すべき
2013.03.21
PVeye
公益財団法人自然エネルギー財団(会長・孫正義ソフトバンク社長)は、調達価格等算定委員会が3月11日にとりまとめた「平成 25 年度調達価格及び調達期間に関する意見」について、意見書を提出した。
意見の概要は以下のとおり。
1. 委員会が示した調達価格は、実際のデータを踏まえて設定され、おおむね妥当な設定がなされたと評価できる。しかし、一方で、価格の区分や消費者の負担する賦課金額に大きく影響を及ぼす「回避可能原価」など重要な論点が手つかずのままである。
2. 導入目標設定の必要性:
自然エネルギーの導入目標量に応じて、計画的な導入調整と調達価格の設定を行うべきである。早期に自然エネルギーの導入目標値を設定すべきである。
3. 調達価格の将来見通しの提示の必要性:
事業者の開発計画を確実にするために、3 年から 5 年にわた っての調達価格推移の目安を設定すべきである。
4. 調達価格のきめ細やかな設定の必要性:
自然エネルギーを普及拡大するためには、自然エネルギー源それぞれの多様な特性と事業環境を鑑みた対応が必要である。太陽光発電については現状の10kW未満、10kW 以上の区分に、10kW以上50kW未満、50kW以上の区分を新設すべきである。風力発電につ いては、容量毎の区分だけでなく、設置場所の風況に応じた価格設定が必要である。
5. 回避可能原価の算定と設定について:
賦課金に直結する各電力会社の回避可能原価の根拠と計算方法の公開、および、妥当性を検証すべきである。
6. 接続義務の厳格化、接続費用の妥当性の評価:
実質的に電力会社の裁量と運用に任されている系統接続について、「優先接続」のルールを確立すべきである。
7. 調達価格のみの議論では限界があるため、区分の設定方法、実績に基づく価格設定方針、「効率的な事業実施」などについて、委員会の検討項目とすべきである。
8. 造成費を含めた土地価格の上昇なども考慮し「効率的な事業実施」の定義の見直しを行うべきである。
なお、全体の意見書については以下のとおり。
「平成 25 年度調達価格及び調達期間に関する意見」に対する意見書
1. 導入目標設定及び調達価格の将来見通しの提示
(1) 導入目標の設定
調達価格は、本来、目標とする自然エネルギーの将来導入量があってはじめて、
その達成に必要な価格の設定や調整を行うことができる。早期に自然エネルギ
ー導入目標値を設定し、導入目標値に応じた計画的な導入調整と調達価格の設
定を行うべきである。
(2) 調達価格の将来見通しの提示
次年度の調達価格が開始直前まで明らかにされない現行のルールでは、事業者は当該年度に間に合うように駆け込みで手続きを行うか、あるいは、間に合わない可能性がある場合には、事業計画をストップせざるをえない状況にある。 このような駆け込みの発生や、年間を通じての事業開発が見込めない状況は、 結果的には消費者の負担する賦課金の上昇につながる。
事業者の開発計画を確実にするために、将来の自然エネルギーの導入目標値を基に、3 年から5年にわたっての調達価格推移の目安を設定すべきである。
2. 調達価格のきめ細やかな設定
(1) 太陽光発電
太陽光の区分について(「平成 25 年度調達価格及び調達期間に関する意見(以
下、意見書)」p8)、1各年度の委員会の方針に則り、効率的に実施される場合の費用を前提とすること、2区分を細分化すると賦課金負担額が上昇することの2点を根拠として区分は従来通りとしている。昨年度の報告書(「平成24年 度調達価格及び調達期間に関する意見」p5)では「10kW 以上については、当委員会での今般の審議においては、発電規模が大型化しても顕著なスケールメリットは認められなかった」として、10kW 以上の価格を一律とした。しかし、今回の実績データからは 10kW以上50kW未満と50kW以上のシステム費用の平均値には6万円/kW程度の差が見られ、明らかにスケールメリットが見られ、今回の見直しにおいて規模別の価格設定を行わない合理性は低い。また、負担額についても、適正な価格設定を行わないことによる長期的なコスト上昇影響も懸念される。
以上を踏まえ、太陽光発電の調達価格区分は、現状の10kW未満、10kW以上の2
区分から、10kW未満、10kW以上50kW未満、50kW以上の3区分に変更すべきで
ある。
(2) 風力発電
風力発電は容量毎の区分だけでなく、設置場所の風況に応じた価格設定とするなど、風力ポテンシャルを最大化させるための制度設計が望まれる。同時に、 現行制度では、陸上風力発電のみが想定されているが、洋上設置を拡大していくために、別途、洋上風力発電への価格を設定すべきである。
3. 回避可能原価の算定と設定
(1) 回避可能原価の算定方法及びデータの公開
回避可能原価の設定は、消費者への賦課金額に影響するものである。したがっ
て、当該計算方法や採用データは全て公表し、消費者がその妥当性をチェック
できるようにすべきである。
(2) 回避可能原価の設定
現状では、回避可能原価は燃料価格等の可変費のみ、且つ全火力発電設備平均の金額とされているが、特に太陽光発電については昼間の電力需要の高い時間帯に発電するためピークカットによる石油火力電力の代替効果を持つ。「コスト 等検証委員会」が 2011年12月に発表した試算によれば、2010 年時点の石油火力の燃料費は 16.6 円/kWh であり、現在の回避可能原価(4~8 円/kWh)より大幅に高い。従って、太陽光発電については、回避可能原価の算定において一定程度のピークカット効果を反映した金額に修正すべきである。
また、現状では回避可能原価に CO2 対策費用が考慮されていないが、2012 年 10 月より地球温暖化対策のための税(環境税)が導入されており、石炭は従来の 石油石炭税と併せて1トン当たり920円の課税が発生している。また、電気事業者は自主的な取り組みとしてCO2削減にコミットし、国内外の削減対策やクレジット購入などを行っており CO2対策費用が発生している。自然エネルギー起源の電力調達によりCO2対策費用の一部は軽減されていると考えられることから、前述した環境税及びクレジット購入費用実績等を考慮し、回避可能原価の算定において、CO2 対策費用を反映した金額に修正すべきである。
併せて、中長期的には火力発電の資本費の削減効果も考慮すべきである。
4. 接続義務の厳格化・接続費用の妥当性の評価
(1) 接続義務の厳格化・更なる情報公開
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」では、
第5条の下で電気事業者に対して、自然エネルギー発電設備の接続が義務付けられているが、実質的には電力会社の裁量と運用に任されている。政府は系統接続
に関する実態調査を行い、「優先接続」の概念に基づいた系統接続の義務化を確立すると共に、送配電部門の系統のオープンアクセス(開放)、イコールフィッティ ング(条件の平等化)を早急に進め、系統利用の公平化・透明化を実現すべきである。
(2) 接続費用の透明化・妥当性評価
意見書では系統接続に係るコストについての検証が無いが、自然エネルギー財団 が実施した調査によれば連系工事負担金について、電力会社の関連会社が実施し ているケースが多く、内訳が示されないなど不透明な状態である。不透明性はコスト上昇につながり、効率的な事業実施を妨げる。政府は、工事負担金の実態把握を行い、相見積や内訳提示の義務化によるコスト情報の透明化を進めるべきである。
5. 委員会の検討項目について
委員会では単に実績データに基づき価格設定を行う権限しか与えられていないような進め方がなされたが、区分の設定方法、実績に基づく価格設定方針(平均値か中央値か等)、「効率的な事業実施」の考え方なども調達価格を設定する際の重要な要素であり、委員会の検討項目とすべきである。
6. 「効率的な事業実施」の定義
10kW 以上の太陽光の土地賃借料について(意見 p6)、法律上「効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用」と規定されていることを根拠にコストが発生した案件のみの平均値で評価をしている。一方、土地造成費について は(同 p6-7)、コストが発生した案件の平均値は 1.5 万円/kW で想定よりも高額 となっているにも関わらず、「造成費がかかっていない案件が太宗を占めている」 として、実際の平均値を採用していない。この 2 つの費用に対する整理は明らかに矛盾している。矛盾した判断基準は事業者の予見可能性を損なう恐れがあり、来年度の価格設定までには、「効率的な事業実施」に関する考え方の整理を 行うべきである。