[特別対談 第30回]

再エネビジネスの未来

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村和也代表 ✕ ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回は、再エネ分野のコンサルティングを手掛ける日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也代表を迎えて、再エネビジネスの未来を考える。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

土肥氏●日本では今年4月からFITの売電単価が14円まで下がり、事業環境が厳しくなったと思われる方々が多いでしょう。ただ、日本版FITの優遇期間が3年だったことを踏まえれば、すでにFITが始動して6年以上経っていますから、日本版FITは他国と比べてある意味、丁寧な運用だったと言えるのではないでしょうか。というのも、昨年から自家消費という新たな市場が形成され、今年から来年にかけてFIT市場と自家消費市場が併存します。つまり、日本の太陽光発電産業が独り立ちできる環境が国の制度運用によって担保されているのです。太陽光発電産業の独り立ちという点では、ドイツが先行しています。ドイツではすでにFITが形骸化し、オークションシステムや自家消費に移行していますから。

そこで今回は、ドイツの再エネ事情に詳しい北村さんにお話しいただきながら、日本の再エネビジネスの展望を考察できればと思います。

 

北村氏●確かに、日本の再エネ市場はフェーズが変わってきました。太陽光発電が大きな柱であることは変わりませんが、単純に太陽光発電所を建設して売るという事業モデルは徐々に成立しなくなるでしょう。むろん、蓄電池などの新商材を販売していくという選択肢もあるでしょうが、それを手掛けるにしても、日本の太陽光関連企業は視野を広げる必要があるように思います。

なぜなら、いまや再エネ発電所はひとつのツールであり、そのツールをうまく利用する社会の構築が求められているからです。この時代の要請に応えていくところにビジネスがあるので、電力システム全体における再エネの利活用というテーマのもと、企業はどの位置でどの業務に携わっていくべきかを考え、事業を設計していかなければならないのです。広い視野がなければ、これからは太刀打ちできないでしょう。

 

土肥氏●はい。ただ日本の太陽光関連企業は、FITのインパクトが強く、この6年以上にわたってFITの活用を前提に事業モデルを築いてきた経緯があります。北村さんのおっしゃられることは、事業モデルの大きな転換を意味しますから、戸惑うところもあるでしょうね。

ところで、太陽光関連企業は、蓄電池を次の新商材として期待する傾向が強いのですが、これについてはどのように思われますか。

 

北村氏●蓄電池に関しては、日本とドイツで捉え方が大きく異なります。ドイツでは、グリッドパリティの先に〝蓄電池パリティ〟のようなものがあると考え、それを超えるほど蓄電池のコストが下がってから初めて蓄電池を利用しようと考えます。日本のように補助金などを活用して、あるいは高額でも様々な営業手法で蓄電池を売ろうとはしません。事実、VPP(仮想発電所)についても、日本は蓄電池ありきで捉えていますが、ドイツでは蓄電池を活用しない形でVPPが普及しています。