インリージャパン セミオフグリッドシステム商品化

中国太陽電池製造大手、インリー・グリーンエナジーの日本法人が来春、太陽光発電設備とV2H機器からなるセミオフグリッドシステムを商品化する。全国のビルダーや販売・施工会社に提供していく構えだ。

新発売の『セミオフグリッドシステム(仮称、以下SOGS)』は、8.1kWの太陽光パネルとPCS(パワーコンディショナ)、V2H(車と住宅間の双方向給電)機器で構成される。特徴的なのは、据置型の蓄電池ではなくEV(電気自動車)を蓄電設備として活用する点で、太陽光発電設備で発電した電力は、蓄電設備を活用しながら極力自家消費するが、電力が余れば売電し、不足すれば電力会社から購入するという、太陽光による発電量を最大限活用する仕組みである。

インリー・グリーンエナジージャパンは、2017年8月、茨城県の有力ビルダー、ファーストステージ(以下、FS)と協業し、ひたちなか市の住宅展示場に完全オフグリッドハウスを建設した。FSが施工した戸建て住宅に、インリーが6.5kWのパネルとPCSを備えた12kWhのハイブリッド蓄電設備、V2Hに加え、ガス発電機まで導入。電力の完全自給自足を実現したのだ。

ただこのオフグリッドシステムの導入費用は500万円にのぼり、一般の消費者が簡単に購入できる金額ではないうえに、逆潮流しないため余剰電力を捨ててしまっていた。そこでインリーが考案したのが今回のSOGSだ。

同社はターゲットをEVユーザーに絞る。現状、主婦が買い物や子どもの送り迎え程度にしか利用しないEVを蓄電設備として活用することで、据置型の蓄電池への投資を省くことができ、初期導入費用が大幅に下がる。余剰電力は売電するので無駄にならない。

これで、償却期間が20年程度の完全オフグリッドシステムに対し、SOGSは9〜12年になる。なにより、EVに搭載済みの容量30kWhの蓄電設備があれば、災害時に系統からの電力供給が途絶え、悪天候が続いても、2〜3日は平時と変わらず、電力の使用が可能になる。

同社によれば、「09年以前に太陽光発電設備を導入した消費者は、経済性よりも環境貢献への意識が強い。かつ固定価格買取制度の施行によって後から経済メリットを享受することになった、太陽光発電の素晴らしさを実体験で知る、言わば太陽光ファンです。これらのユーザーが、売電期間満了後新電力などに1kWhあたり8〜10円で余剰電力を売電するより、セカンドカーをEVに変えてV2Hを導入し、自立電源化を促すという提案の方がユーザーの興味を引きやすい」という。

電力量料金単価は、再エネ賦課金を含め現時点で1kWhあたり30円前後だ。19年問題対策として4〜5kWhの据置型蓄電池を200万円前後で導入しても「一般的な4人家族の一晩の電力需要は10kWh以上にのぼり、メリットは小さい」(同社)。

電力需要は消費者の家族構成や生活パターンに依存するので、同社は4種類のパッケージを用意した。SOGSほか、EV使用時も太陽光発電で生み出した電力を溜められるよう4〜5kWhの据置型蓄電池を加えたシステムや、完全オフグリッドシステム、さらに投資回収期間を5年以下に抑えた太陽光発電設備のみのシンプルなものまである。

なお、19年2月末から東京で開かれる『第12回PV EXPO(国際太陽電池展)』で、同社はSOGSを採用した家庭の実データを披露する。生き物のような電力需給について生の数字をもとに分析し、プレゼンテーションも行なう予定だ。

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