ESIの自家消費攻略法
「太陽光の知見だけでも自家消費提案は可能」
販売・施工会社に自家消費用の太陽光発電設備の販売を支援するヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥社長。自家消費提案に苦戦する会社が多いなか、有効な提案法を語った。
まず、ファーストコンタクトの注意点から述べましょう。実はここが非常に重要なのです。
自家消費提案の場合、客先の電力使用状況を把握しておかなければ、お客様にメリットを提案できないのですが、お客様と面識がない段階でデータの提示を要求すると厚かましい印象を与えかねません。では資料がない状態でどのように提案するべきか。恐らく、ファーストコンタクトの段階でつまずかれる方が多いのではないでしょうか。
しかし、実は自家消費提案の資料は事前に作成できるのです。太陽光発電の販売・施工会社の方々はこれまで培われた経験があります・たとえば、グーグルマップなどを利用して、あらかじめ客先の屋根を確認しておけば、少なくとも、太陽光パネルを設置できる枚数や、年間の予想発電量、あるいは建設費は試算できるでしょう。最初はそれを用いるのです。
もちろん、客先の電気代を把握できる企業には提案力があります。工場か、倉庫か、商業施設か、あるいは病院や老人ホームなのか、傾向を掴み、具体的な資料を用意して自家消費案件を受注されていらっしゃる企業はいくつかあります。ただ、それができるのは、電力小売り会社など一部に限られ、太陽光発電設備の販売・施工に特化されてこられた会社にとっては難しいのです。
しかし心配はいりません。要点さえ抑えれば、太陽光発電の知見だけで自家消費は提案できます。ポイントは、お客様に複数の選択肢を用意して差し上げることです。
第1に、FIT売電モデルです。自家消費を提案するのに、なぜFITとお思いになられるでしょうが、自家消費を提案する際も、FITモデルは選択肢として用意しておきましょう。客先の屋根上に太陽光パネルをいっぱいに敷きつめて、発電した電力をFITで全量売電した際の投資シミュレーションですから、これは問題ないはずです。
第2に、自家消費モデルです。この場合、客先の電気代が分からないので、あくまでも仮定として、屋根上の太陽光パネルで発電した電力量の自家消費率を用います。つまり、発電した電力量に対して100%自家消費した場合と、自家消費率70%の場合、50%の場合といった形で3〜4つ仮定条件を用意するのです。
こうすれば、客先の電力使用量を把握できなくても、自家消費による投資メリットを概算で提示できます。太陽光電力を自家消費すれば、外部から電力を購入せずに済むので、発電量と自家消費率、電力量料金単価を掛け合わせれば、年間の電気代削減額が求められます。電力量料金単価は、客先のエリアを管轄している電力会社の一般的な料金単価を用いれば充分でしょう。この段階はあくまでも目安を示すことが目的ですから。
そして第3に、余剰売電モデルです。工場の場合、年間の稼働日数が250日程度ですから、自家消費率100%は非現実的です。それを考慮して、たとえば自家消費率70%の場合、残りの30%を捨てるのではなく、FITで売電するとどうなるか、シミュレーションするのです。
留意点は、最初から蓄電設備の提案は控えることです。蓄電設備を入れると、初期投資が上がってしまいますし、何よりもシミュレーションが複雑になります。提案は極力シンプルな方がいいのです。
この提案の目的は、どれを選択しても、お客様にメリットがあるということ。さらに、自家消費率によってそのメリットが変化するということを印象づける点にあります。提案書を目にした時、お客様は自家消費に対して興味を示されるでしょう。そこで、「より正確なシミュレーションを致しましょう」と提案して、お客様から1年分の電力使用量データをいただき、また現地調査をさせていただくようにすると、商談が進めやすいように思います。