[特別対談 第26回]

高性能という価値

LGエレクトロニクスジャパン 楠山恭央 Energy Business Part 部長 × ESI土肥宏吉社長

プロフィール●楠山恭央(くすやま・やすお) 1968年東京都生まれ。91年東京電機大学工学部卒業後、東芝ライテックに入社し、照明器具や光応用品の販売に従事。2006年液晶部材販売ブライテックの立ち上げに加わり取締役に就任。11年アイリスオーヤマ東北責任者を経て、14年LGエレクトロニクスジャパンに入社、17年1月より現職。

土肥氏●貴社は世界で太陽光パネルを販売していらっしゃって、米国でも販路を築かれている印象があります。米政府によるセーフガード(パネルの輸入制限)の影響はあったのでしょうか。

 

楠山氏●当社は米国の住宅用市場でシェアを伸ばしましたから影響を受けました。17年は太陽光パネルの総出荷量が1.6GWで、米国向けが600〜700MW、日本と欧州がそれぞれ200MWずつで、そのほか、韓国、東南アジア、豪州という内訳ですから、米国は最大の出荷先でした。その米国への販路を絶たれるわけですから、影響は大きいと思います。ただ、韓国の市場も伸びていますし、その他の市場で需要を掘り起こして、影響を最小限に抑えていきたいと思っています。

 

土肥氏●日本では、どのような中長期戦略を描かれているのでしょうか。これから徐々に大型プロジェクトも減っていくでしょうし、一方で、FIT売電から自家消費利用へと市場は変化していくと思われます。コスト要求も厳しくなると思われますが。

 

楠山氏●大型プロジェクト向けの受注が残っているといっても、来年までです。その後は市場環境の変化に応じて、新しい販路を開拓していかなければなりません。当初描いていた家電の商流に乗せて住宅向けに展開するというのがひとつでしょう。もうひとつは、グループ内での連携や協業です。LGグループは、車載用の蓄電池など、様々な関連製品を生産しているので、グループ内の様々なリソースを活用してパネルを販売していくつもりです。

 

土肥氏●貴社は、家電の販売で築いたブランド力をお持ちなので、エンドユーザーは日本の大手電機メーカーと同じイメージを持つのではないでしょうか。その点、住宅用への展開も、他の専業メーカーと比べると、アドバンテージがあるように思います。

ただ、やはり世界トップクラスの高性能が最大の武器でしょう。プロジェクトの評価でも、高性能で、パフォーマンスの高い貴社の製品は高評価です。市場が自家消費へ変化すれば、パネルは狭小な屋根上に設置される機会が増えるので、なおさら高性能、高効率は優位性を発揮するのでしょうね。

 

楠山氏●そういっていただけるとありがたいのですが、N型単結晶ウエハの供給量は物理的に少ないので、価格面で劣勢に立たされることもあります。とはいえ、これまで当社は、高性能、高効率という付加価値戦略で戦ってきたので、この路線は変えられません。高性能という価値を、今後も受け入れていただくために、どう提案していくべきか、環境づくりも含めてまだ課題はあると思っています。

 

土肥氏●確かに、太陽光パネルはコモディティ化が進んでいるので、今後も高性能で差別化を図っていくというのは簡単なことではないのでしょう。技術的にも常に先行していかなければなりませんし。ただ、希少性に対する魅力というものは普遍的です。とくに日本人はそれを価値に転嫁する傾向が強いので、高性能パネルの需要は廃れることはないように思います。貴社の取り組みに期待しています。

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