[特別対談 第25回]
O&Mビジネスの課題
CO2O 酒井正行 社長 ✕ ESI 土肥宏吉 社長
酒井氏●結局、発電事業はリスクのコントロールなのですが、O&Mで補えるリスクと、設計や施工でしかコントロールできないリスクがあります。たとえば、造成計画や排水計画の不備です。実際、特別高圧太陽光発電所で多くみられるのですが、これを放置しておくと、雨水が大量に流れて斜面が崩れるなど、様々なトラブルを引き起こす大きなリスクになり得るのですが、この場合、O&M会社ではリスクをヘッジできません。造成からやり直さなければならないのです。
そこで、我々は最近、建設プロジェクトの全般を運営管理するCM(コンストラクション・マネジメント)を始めました。施工段階からリスクを可視化させていただくことによって、将来のリスクを極小化できればと考えているのです。
とくに低圧太陽光発電所向けのO&Mに関しては、上限があるなかで、O&Mには費用をかけられないのが実情です。いかに後で手がかからないように、しっかりと建設できるかが重要だと思います。
土肥氏●事業者の方々はできるだけ初期投資を抑えようとしますから、極力費用を削減するために、EPC(設計・調達・建設)企業の設計が甘くなりがちなのでしょう。そう考えると、CMの存在は不可欠ですね。
私がよく聞く話は、そもそも設計図書がないという問題です。せっかく太陽光発電所のセカンダリー市場が立ち上がっても、商品を鑑定するための最低限必要な書類がなければ、当然ながら取引は成立せず、市場は活性化しません。
酒井氏●そうですね。以前、あるO&M会社から引き継いだ特別高圧太陽光発電所は、記録がまったくありませんでした。点検表もなければ、保守・管理の記録すら残っていないので、唖然としたのを覚えています。不動産物件の取引を見れば明白ですが、書類が残っている物件と、そうでない物件とでは、資産価値が大きく違います。
こうした問題もあって、我々は、『太陽光発電事業の評価ガイド』土木・構造ワーキンググループの主査を務めさせていただき、来月にも発効される予定です。一つひとつ課題を解決しながら、市場の健全化に寄与できればと思っています。
土肥氏●まだまだ課題の多い日本のO&Mですが、裏を返せば発展の余地が多く残されているともいえます。英知を結集して、O&Mの課題を克服していかなければなりませんね。