ESI土肥社長が語る

住宅用再エネ市場の未来

太陽光発電設備や蓄電設備など様々な再エネ商材を扱うヨーロッパ・ソーラー・イノベーション。同社の土肥社長が住宅用再エネ市場の展望について語った。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

一時期停滞気味であった住宅用太陽光発電設備の導入量が上向きに転じてきたので、住宅用の再生可能エネルギー市場は堅調であるように思います。確かに、2020年度はコロナ禍の影響で市場規模は縮小する可能性もありますが、コロナ禍が収束すれば、すぐに回復し、市場は成長路線を辿るでしょう。

ドイツの太陽光市場の推移と同じ流れになるならば、今後は太陽光発電設備と蓄電設備のセット導入がますます一般的になるでしょうね。ドイツでは、電気料金が高いなか、FITの売電単価が下がり、蓄電設備のコスト低減も進んでいるので、太陽光発電設備と蓄電設備を導入して再エネ電力の自家消費率を高め、経済性を追求するという利用法が定着しました。いまでは、FITなどの国の補助から〝自立〟し、安定して成長する市場が形成されています。

大規模な太陽光発電所の開発が進み、未稼働案件が順次稼働すると、いよいよ海外メーカーが住宅用再エネ市場に参入し、競争環境が厳しくなるのは目に見えています。実際ドイツでも、太陽光パネルやPCS(パワーコンディショナ)に蓄電設備も含めて、海外メーカーが参入し、競争が激化しました。いまのところ、各分野でドイツメーカーは健闘していますが、ここ最近は海外メーカーに押され気味です。日本も数年後には、ドイツのような住宅用再エネ市場が形成されるように思いますので、その過程で国内メーカーには奮闘していただき、一定の販売シェアを確保していただきたいですね。

その一方で、一般世帯が負担なく再エネ設備を導入できるPPA(電力売買契約)モデルは日本でどれほど普及するのでしょうか。米国では一時急速に普及しましたが、ドイツではいまだにそれほど広がっていません。再エネ設備の価格が下がり、設備を購入して所有することへの抵抗が小さいのかもしれません。つまり、設備の価格が高いうちは、「無償」の価値は高く、顧客に響くのでしょうが、ドイツのように設備の価格が下がってくると、無償の価値が薄れていくとも考えられます。とすれば、初期の導入費が高いときこそPPAモデルの訴求効果が発揮されるということになりますが、果たして日本ではどうなのか、興味深い点です。

ともあれ、今後太陽光発電設備と蓄電設備による自家消費利用が普及すれば、「設備」そのものよりも、設備が生み出す「再エネ電力」に焦点が移るのでしょう。そして再エネ電力の用途開発が発展するように思います。LED照明器具や省エネ電気給湯器、空調設備などの家電製品はもちろんのこと、電気自動車や電動バイクといったモビリティのほか、VPP(仮想発電所)やマイクログリッド(小規模電力網)の概念もあります。それによって、一般世帯から電力部門や交通部門へと再エネ化が進み、真のRE100(再エネ100%)が実現するのでしょう。

そう考えますと、住宅用再エネ市場はまだまだ発展の余地がありますし、脱炭素社会の実現という観点に立てば、主体的に発展させていかなければならないのではないでしょうか。

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