[特別対談 第23回]

進化する蓄電技術

CONNEXX SYSTEMS 塚本壽社長 × ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●塚本壽(つかもと・ひさし)1955年大阪府生まれ。79年京都大学工学部卒業後、GS日本電池に入社。英国スコットランドのアバディーン大学で博士号取得。98年米Quallionを設立し、CEO・CTOに就任。2011年CONNEXX SYSTEMSを設立し、代表取締役に就任。

塚本氏●当社のバインド電池は、過充電に対する安全性が最大の特長です。リチウムイオン蓄電池は、高性能だが、しっかり管理しないと暴走する恐れがあります。そのため電気回路で管理するのですが、その回路が正常に働かずに事故が起こる可能性を想定して、もうひとつ回路を設ける。2つでも不充分ならば、3つという形で増やし、現在の保護回路のようなものが搭載されるようになりました。バインド電池も保護回路を備えていますが、そこにさらに、過充電を吸収する化学的なプロテクションが追加されたわけです。

 

土肥氏●蓄電池のもうひとつの課題は、価格が高いことです。電気自動車に搭載されている車載用蓄電池と比べると、住宅用や産業用の蓄電池は値段が高額です。ならば、鉛蓄電池を使う方がよいのではないかという考えもありますが、いかがでしょうか。

 

塚本氏●確かに鉛蓄電池は安いのですが、リチウムイオン蓄電池が5000回以上充放電を繰り返すことができるのに対し、鉛蓄電池の充放電回数は1000回程度です。生涯に充放電できる電力量で比較すると、リチウムイオン蓄電池の方が費用対効果は高いのです。

そこで当社のバインド電池は、リチウムオン蓄電池を主とし、鉛蓄電池は最低限の搭載に止めると共に、リチウムイオン蓄電池から使用し、最後に鉛蓄電池を使う設計にしています。フルに使用するのは、大停電の時だけなので、10年間で10回もないでしょう。日常的にはリチウムイオン蓄電池を使うという仕様です。

結局リチウムイオン蓄電池の方がよいのですが、過充電で火を噴く恐れがあるほか、低温時に石のようになってしまう。これらは改善の余地がないので、リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池をケミカルな系として一体化することで、本質的に過充電リスクを解消し、マイナス30℃でも機能する低温特性を持たせたわけです。

 

土肥氏●蓄電池の価格は、EV(電気自動車)が普及すると、劇的に下がるかもしれません。

 

塚本氏●私は以前EVには懐疑的でしたが、フェラーリの電池をつくる機会があって、7年前にイタリアでEVF1の車体メーカーを訪問した時に考えを改めました。シミュレータ上のコースでF1とEVF1を競わせるのですが、馬力では80%程度のEVF1がエンジンF1に勝ってしまう。それを見た時EVは普及すると確信しました。EV市場は拡大し、2年も経てば安価な蓄電池が大量に出てきます。価格はこなれてくると同時にばらつきも出てくるでしょう。バインド電池は、様々なメーカーの蓄電池が使用できるので、これからが本領発揮です。

 

土肥氏●EV時代の到来とともに、蓄電池の価格は劇的に下がり、さらに貴社のバインド電池が本格利用されるようになるというのは、非常に楽しみですが、その一方で、私は貴社の完全独立電源は海外でもニーズがあると思います。特にアフリカは、送電網が未発達なので、固定電話の普及を通り越して携帯電話が普及したように、電力事情も送電インフラの整備を待たずに、各地域でマイクログリッドが拡がりつつあるのです。独立電源のニーズは拡大しており今後が楽しみです。

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