[特別対談 第22回]

企業存続の条件

ウエストホールディングス 吉川隆 会長 ✕ ESI 土肥宏吉 社長

プロフィール●吉川隆(きっかわ・たかし)1950年岡山県生まれ。アパレルや建設関連の仕事に携わり、81年広島市で創業、84年に西日本鐘商(現ウエストホールディングス)を設立し、04年にジャスダック証券取引所に上場。09年11月より現職。

吉川氏●太陽光発電は、電力会社から電力を購入する価格と充分競争できる価格帯まで設備の価格を下げていかなければなりません。結果として住宅用も産業用も自家消費でしょう。ただ品質も重要です。品質を維持しつつ、価格低減をどこまで進めていけるか。それがすべてでしょう。

 電力小売りは厳しい。今年9月に東京商品取引所が電力先物を上場するので、好転する兆しもありますが、電力卸売市場が未成熟なので、新電力会社の息がどこまで続くか心配です。とはいえ、国はいずれ競争できる環境を整えると思います。電力会社と新電力会社が競争する市場が形成されなければ、電力市場を自由化した意味がなくなりますから。

 省エネは拡大するでしょう。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が進化すれば、センサが温度や人体を感知し、自動制御によるエネルギー利用の最適化が実現します。LED照明や空調機器といった従来型の省エネ機器だけでなく、より効果のある省エネシステムを提供していく方向になるでしょう。

 

土肥氏●蓄電池の動向を見て思うのは、最初は日本がリードしていても、パネルメーカーの勢力図の変化と同様に塗り替わり、いまは韓国や中国のメーカーが台頭しています。設備や機器といったハードは海外勢が強く、日本の企業はビジネスモデルで差をつけていくべきなのではないかと考えてしまいます。

 

吉川氏●中国の深圳に行けばハードは揃っています。土肥さんがいわれるようにビジネスモデルが重要だと思います。変化の激しい太陽光発電の世界では、ハードも重要ですが、ハ―ドを用いた新たな価値創造が問われていると思うからです。

 たとえば、当社は北海道から九州まで300ヶ所の太陽光発電所のO&M(管理・保守)を手掛けていますが、これらを管理していると、気象条件の異なる発電所のデータが多数蓄積されます。これらのデータを活かせば、地域性も踏まえた最適な設備の選定や設計を考案し、今後発電所を開発される方へ提案できるのです。さらには、発電所の発電量は初期の値から徐々に下がりますが、初期の発電量を維持し、できれば発電量を高めていく技術の開発です。これこそO&Mの真髄で、新しい価値だと思います。

 

土肥氏●最後に、企業存続の条件をどのようにお考えですか。FITの導入を機に拡大した企業がある一方、私などは臆病者で、不景気の波を恐れ、人を増やさずに協力企業と関係を構築してきました。もっと大胆に事業を拡大しておけばよかったとも思う次第ですが。

 

吉川氏●臆病でないと、経営者は務まらないと思います。一流会社の経営者は、一方ですごく臆病です。だから会社を維持できるのです。

 企業が存続するかしないか、それは〝人財〟次第でしょう。

 「当社は何が得意で、何を成すべきか」、コアの事業を明確にし、そのコアの事業は当然〝人財〟が担うので、育成には力を入れる。ただ、コアの事業以外は、協力会社にお任せするのです。内製化して利益を独占するのではなく、シェアするのです。

 形にこだわると、形を維持しようと無理をして、形に苦しめられます。会社は形ではなく中身、100%〝人財〟です。そして〝人財〟は少数になれば精鋭になるのです。

 

土肥氏●本日は、市場の動向からビジネスモデルや会社経営まで、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

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