[特別対談 第21回]
ベンチャー経営のあり方
Looop 中村創一郎社長 × ESI 土肥宏吉社長
中村氏●一般には、自家消費モデルでしょうが、自家消費はいうなればBtoC。私はCtoCをつくっていきたい。電力会社への売電から、余剰電力を蓄電池にためて自家消費するようになり、その次を見据えて、余剰電力をお隣さんや地域に売る仕組づくりです。
そのためには電力会社になる必要があったので、当社は新電力に参入しましたが、これを、太陽光発電所に投資してきた一般のコンシューマの間で広める。需要家同士が余剰電力を売り買いするモデルです。
このモデルが浸透すると、隣の家に電力を届けるのに送配電コストが一律同じというのはおかしいという考えが芽生えます。そして、電力を届ける距離に応じて送配電コストを算出する仕組みを国に働きかけていくのです。これが実現して初めて分散型電源の本当のメリットが出てくるのです。
土肥氏●電力のコストが下がり、やがて誰もが電力を無料で使える時代が到来するかもしれませんね。発想の転換が起こり、それによってさらに新しいビジネスが生まれます。
中村氏●はい。だからまず分散型の再生可能エネルギーと蓄電池、さらに電力小売りを繋ぐ。それによって電力コストを下げ、安い電力を利用した付加価値製品を提供するのです。水素製造や水の浄化、あるいは野菜工場かもしれません。これこそエネルギーのために争っていた時代からの解放です。このモデルを構築した暁には世界展開です。
土肥氏●お話を聞いていると、新しい発想のもと、壮大なビジョンを描き、そのうえでビジネスセンスを兼ね添えたリーダーが、ベンチャー経営には必要なのでしょう。中村さんは、太陽光ベンチャーの経営トップに求められる資質とは何だと思われますか。
中村氏●ベンチャー企業が面白くない会社になると、有能な人材は去っていきます。だからこそ、新しいことに常に挑戦し、成長し続けていかなければならないのですが、同時に今後業界を牽引していく企業のリーダーに求められるのは、厳格さではないでしょうか。
私のようなタイプは、柔軟な発想を持ち合わせていても、遊び心が旺盛で、悪くいえば軽い。しかし太陽光発電事業は20年、30年と続き、それを支える企業は、真摯に顧客と向き合い、O&Mでも、EPCでも、徹底して効率化を進めていく必要があります。プロ意識を持って地道に取り組む人材を育てていかなければならないので、威厳のあるリーダーが必要なのだと思います。
土肥氏●会社は人材といいますが、優秀な人材がいれば、会社は成長しますが、人材に依存する体質が生まれ、人材を失うことによるリスクが高まります。人材よりもビジネスモデルに依拠する体制をつくると、人材依存によるリスクは薄まりますが、イノベーションが生まれにくくなります。あるべきベンチャー経営とは何か、容易に答えを導き出せるものではないですね。