[特別対談 第20回]

分散型電源の明日

エナーシス・ジャパン 鈴木浩二代表 × ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●鈴木浩二(すずき・こうじ) 1953年広島県生まれ、75年ブリヂストン入社、1999年に社内新事業で手掛けた蓄電池事業を持って、同僚7人とスピンアウトし、現在は世界最大の産業用蓄電池メーカー、エナーシスの極東代表を務めている。

土肥氏●そう考えますと、以前、当社が貴社と仕事をさせていただいた山梨県のピークカットシステム。あれは系統にとっても有効な分散型電源だと思います。太陽光発電の発電容量や蓄電池の蓄電容量を増やしていくと、需要のピークを抑えられます。当初300kW以上だった契約電力がシステムの導入によって250kWへ下がったので、これを発展させれば、契約電力を200kW、100kWと下げていくことができ、ゼロも可能です。さらに発電容量を増やせば、余剰発電能力になるので、あのモデルこそ重宝される電源です。

そこで鍵を握るのが、貴社が得意とされている鉛蓄電池と短周期変動用のリチウムイオン蓄電池の組み合わせでしょう。あのシステムは非常に評判がよく、最近は設備を実際に販売したいという声をいただくようになりました。反応が明らかに変わってきたのです。

 

鈴木氏●それは非常によいお話しですが、私は時々、蓄電池は最適なものなのかと、自己否定しつつ確証を得ながら蓄電池を販売しています。通信基地局のバックアップ用蓄電池を販売するなかで、蓄電池が最適と思う場面もあれば、必ずしも確信を持って最適だと思えない瞬間もあるからです。

そもそもバックアップ電源は、新潟沖地震でNTTの通信基地局が3時間の停電で復旧したこともあって、3時間給電できればよいという考えがありました。しかし東日本大震災が発生し、県庁所在地の基地局のバックアップ電源は24時間給電できなければならないということになったのです。震災直後は素直に受け入れたのですが、24時間給電可能な蓄電池となると、コストが嵩みます。果たして経済的だったのかと思うのです。そこでいまは注目しているのはガス発電機です。

 

土肥氏●プロパンガスを燃料として使うガス発電機のことですね。

 

鈴木氏●はい。ガス発電機で発電した電力は本来、交流なのですが、あるメーカーが直流のガス発電機を開発しました。これは非常に画期的で、出力値は太陽光発電と近く、AC/DC、DC/ACの変換器を必要としませんから、ガス発電機と太陽光発電設備を直流出力のままハイブリッド化できるのです。

太陽光発電は燃料代がかからず競争力のある電源ですが、自然の影響を受けるので短周期の出力変動を補完する蓄電池が必要です。ただ余剰電力を蓄電池にためて使うということになると、それだけ蓄電池が必要になるので、経済性を考慮すると疑問符がつきます。私がお勧めしたいのは、日中は太陽光発電を使って短周期の変動を蓄電池で補完し、夜間はガス発電機を利用するシステムです。恐らくこれが最も経済合理的な分散型電源でしょう。

 

土肥氏●世界を見渡すと、送電網が整備されていない国があります。たとえばアフリカの無電化地域では、そもそも昼の電源すら確保できません。このような地域では、まず太陽光発電を必要としており、やがて蓄電池が重宝されます。

通信が、固定電話網を通り越して携帯電話が普及したように、電力も、送配電網の整備よりも早く分散型電源の社会が構築されるかもしれません。

そう考えれば、太陽光発電と蓄電池による分散電源には、先進国でも途上国でも必要とされる普遍的なニーズがあります。今後世界的に普及していくのはもはや必然といえるでしょう。

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