[特別対談 第9回]

品質とコスト

フォノソーラー 耿耿副総経理 × ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●耿耿(げん・げん) 1979年中国江蘇省生まれ。2001年江蘇大学卒業、04年にスメックグループに入社。07年海外業務営業課長、10年海外営業2部部長を歴任し、12年フォノソーラー副総経理に就任。

耿氏●確かに、日本や欧米の製品と比べると、中国の製品は割安ですが、低品質です。これは日欧米と中国の文化的価値観の相違から生じたというよりは、経営者の事業観の違いによるものだと私は思います。

中国の経営者は非常にアグレッシブで、日欧米の経営者とは異なる雰囲気です。中国ではどの分野でも常に競争が激しいので、彼らは勝ち抜くためには価格しかないと考えているのです。消費者にモノを売るとき、〝割安〟を提供するのが最も分かりやすいからです。

しかし、長期的に見れば、これは間違った戦略だと思います。価格競争で勝ち抜くためには、企業は生産規模を拡大しなければなりませんが、市場は都合よく拡大し続けるとは限りません。縮小に転じれば、在庫が余り、経営が悪化してしまうのです。それでもコストを落すにはどうするか。製品の品質を落として原価を下げる他に術はなくなってしまいますが、そうすると、信用を失います。これがまさに中国の太陽光発電業界で起こっていることです。

これらは、日本ではかなり前に起こったことで、今では大手企業は投資に慎重ですが、中国では未だそこに至っていないのです。中国メーカーは、最低でも1〜2年で事業を成功させようと躍起で、5年以上待つことができないのです。

 

土肥氏●では、他の中国メーカーと違って、貴社はなぜ高い品質を維持し続けることができるのですか。

 

耿氏●当社には、〝品質の高いビジネス〟を継続していこうという方針があります。品質の高いビジネスとは、いかなる状況にも耐えられる強いビジネスのことで、それは、自社と顧客、そして協力会社も合わせた3者が等しく利益を得る関係を築くことと考えています。つまり、3者の関係が崩れてしまうと、ビジネスは破綻し、当社は存続できない。だからこそ、当社は顧客の利益、協力会社の利益に配慮して、製品の品質維持に努めているのです。

そして、この理念を社員一人ひとりが共有している点も当社の特徴です。スメックグループには複数の子会社があり、各企業が事業を主体的に運営しています。というのも、各子会社では、自社株の65%をその会社の社員が保有しており、中央政府の保有率は35%とマイノリティなのです。

 

土肥氏●なるほど、顧客第一主義の事業理念が社員一人ひとりに浸透しているからこそ、品質とコストの両面を追求していく体制が築かれていったわけですか。

今後厳しい局面を迎える日本の太陽光企業が、踏み止まって事業を継続できるかどうか、それも最後は確固とした事業理念を社員同士が共有し合っているかどうかでしょうね。

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