[特別対談 第14回]

ドイツに見るPVの未来

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村和也代表 × ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●北村和也(きたむら・かずや) 1956年長崎県生まれ。79年早稲田大学政経学部卒業後、民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作。98年ドイツ留学。2011年日本再生可能エネルギー総合研究所を設立。13年日本再生エネリンクを設立し、代表取締役に就任。

土肥氏●私はこれまで、水素社会の到来は、まだ先になると思っていましたが、最近は考えを改めました。実際に、当社にも、水素の製造を目的に太陽光発電設備を導入したいという依頼が増えているのです。

 

北村氏●水素を活用すれば、再エネ電力を貯蔵できますし、燃料電池を使えば、電力だけでなく熱エネルギーも供給できます。さらには、モビリティの動力源にもなりますから、可能性は広がります。

 

土肥氏●そう考えると、太陽光発電の普及に伴い、地域内のエネルギー循環や水素社会の実現など、多方面への広がりも期待できますが、太陽光発電そのものも、今後は自給自足モデルに移行され、まだまだ拡大すると思います。

FITは、太陽光発電を普及させるうえで起爆剤として有効ですが、電力系統の問題や国民負担の増大などを考慮すると、限界があります。これに対し、自給自足モデルは、蓄電池はもちろん、日射量の予測技術なども進めば、ビジネスは無限に広がります。

確かに、蓄電池のコストが高いため、自給自足モデルは時期尚早との意見もありますが、私は必ずしも自給自足イコール蓄電池ではないと思っています。物流施設であれば、屋根に設置した太陽光発電設備を、大型冷蔵庫の冷却用電源として使用できますし、運搬用のトラックやフォークリフトを電動に切り替えれば、これらの電源にもなります。電気自動車の普及如何によっては、電気自動車が定置式蓄電池に取って代わることも充分考えられます。

 

北村氏●そうですね。そもそもFITはなくなることを目的とした制度ですから。そして、土肥さんがいわれるように、今後は自家消費が主流になるでしょう。実際、ドイツの太陽光発電マーケットは、2015年に1.46GWまで落ち込んだのですが、16年には1.52GWへ上昇し、17年は2GWへ拡大すると見られています。この要因は、自家消費利用の拡大です。ちなみに、蓄電池の出荷台数は16年2万セットでしたが、17年には4万セット売れると予想されています。

再エネ電源のなかで、太陽光発電は安くて使いやすく用途が広いので、圧倒的に普及していくと思います。

 

土肥氏●FIT売電から自家消費利用への大きな潮流の変化があって、そのなかで様々な利用形態が生まれていくというのが、太陽光発電の未来でしょう。ビジネスモデルの創出と、それをどう広めていくか、民間企業の力が試されるときですね。

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