〝発電払い〟で住宅用太陽光を222MW設置へ!

デンカシンキ、フリーソーラープロジェクト始動

年々買取り価格が下がる住宅用太陽光発電。さらなる普及は難しいといわれているが、デンカシンキ(愛媛県松山市)は、市場の停滞ムードを払拭すべく、新しい販売手法を考案、代理店を募り始める。一体どのようなスキームなのか。

「残り3年で、住宅用太陽光発電をまだまだ広め、分散型電源の基盤を作りたい」。

デンカシンキの木村賢太社長は力強く語る。木村社長のいう「3年」とは、2019年度までの期間を指す。

確かに、住宅用太陽光発電の買取り価格は17年度の30円(出力抑制地域)から28円、26円と減額されるが、裏を返せば、向こう3年の価格が決定されており、19年度までFIT制度は続く。太陽光発電設備を設置済みの住宅オーナーは多く、新規顧客の獲得は厳しいに違いないが、同社にはある妙策があったのだ。

名は、『フリーソーラープロジェクト』。太陽光発電設備を住宅に設置したい住宅オーナーが無理なく設備を設置できるように、別に投資家を募り、住宅オーナーの屋根に無料で設備を設置するというものだ。

すでに太陽光発電設備の無料設置に取り組む事業者はいるが、設備を投資家から住宅オーナーに譲渡するまでに20年間の契約期間が必要だったり、住宅オーナーが新電力へ切り替えなければならなかったりと、制約のある場合が多い。

そこで同社は、「太陽光発電設備を少しでも早く自分のものにしたいというオーナーの声に応えるため」(木村社長)、無料設置に新しいスキームを取り入れた。それが〝100%発電払い〟である。

発電払いとは、太陽光発電で生み出した電気を全て投資の回収に充てる仕組みだ。具体的には、グループの新電力会社『坊っちゃん電力』が余剰電力の買取りに加えて、太陽光発電による自家消費分を30円/kWhで住宅オーナーから回収する。この累積金額が太陽光発電設備の費用に達した段階で、所有権を投資家から住宅オーナーに移す。

発電した電力を全て設備の投資回収に充てることで、電力会社の切り替えなしで、平均8年5ヵ月での設備譲渡を可能にしている。

「太陽光発電設備を現金で買うのは大変ですし、ローンを組めば借金が増えます。また、米国などで普及した第三者所有モデルも完済まで20年かかるので、発電払いはそれらと違う第4の支払い方法です」(木村社長)。

 

代理店募集を開始

同社は昨年7月から愛媛県内で試験的にフリーソーラープロジェクトを実施してきたが、3月には1ヵ月で80世帯と契約を締結。手応えを得たようだ。そこで今年7月から、代理店を募集し、出力抑制地域を中心とした全国でフリーソーラープロジェクトを本格展開していく構えだ。

木村社長は、「自社販売分も含め、3年間で3万7000世帯、222MW以上を販売するつもりです」と計画を明かしつつ、「まずはFITが利用できる3年間、フリーソーラープロジェクトで住宅用太陽光発電を普及させます。その後は、コストの下がった蓄電池などを絡めて、送電線を使わない世界を提案したいと思っています」と構想を語る。

同社は、市場の冷え込みムードなどものともせず、この発電払いで、住宅用太陽光発電の普及を加速させる意気込みである。まだ太陽光事業を諦めきれない販売店は、同社と組んでみるのも手だろう。