[特別対談 第12回]
日本メーカーのグローバル展開
田淵電機 貝方士利浩社長 × ESI 土肥宏吉社長
土肥氏●貴社のPCSは、国際規格のIECや米国規格のULに準拠した製品です。世界各国どこでも販売できる製品をつくられているので、その点からも、確固としたグローバル志向が伺えるのですが、実際に、海外に展開されている日本のメーカーはごく僅かです。やはり、日本のメーカーにとってグローバル展開はハードルが高いのでしょうか。
貝方士氏●多くの日本メーカーは、まず、製品を海外の規格に合わせることに、戸惑われているはずです。各国、各地域でレギュレーションは異なりますから、一つひとつハードウェアに適応させていかなければなりません。
さらに、人脈づくりも苦労する点でしょうね。優れた製品を開発できても、メーカーが直接ユーザーに販売するわけではありません。貴社のような有力な商社と取引しなければなりませんから、製品云々の前に、まず商社の仕入れ担当者の方と信頼関係を築かなければならないのです。この辺りも、言葉の壁がある日本企業にとっては高いハードルでしょう。
土肥氏●日本ではそれなりにブランドが浸透しているメーカーであっても、海外では無名ですからね。販路を開拓するためには、ゼロから始めなければなりません。それにしても、貴社は米国や欧州のみならず、アジアにも展開されていらっしゃいます。インドはコスト要求が最も厳しい国と聞いていますが。
貝方士氏●インドは、世界最安値の市場です。インドで勝利できれば、どこの国でも勝ち残っていけると思います。バングラデシュも今後成長が見込めるので、当社はインドとバングラデシュをひとつの商圏と見ています。このほか、アジアでは、タイで1MW設置し、順調に稼働していますし、カンボジアやマレーシア、インドネシアなどでも、現地のEPCの方々と交流を深めています。
当社は、産業用分野には25kW機と33kW機を、住宅用には蓄電池と蓄電ハイブリッドPCSを国内外で販売していきます。いま蓄電池のコストは、かつて太陽光パネルのコストが急激に下がったように凄まじい勢いで下落しています。蓄電池が本格普及する時代は、そう遠くないかもしれません。
土肥氏●国内では、太陽光発電の設備認定量が累計80GWあって、30GWが建設済みですから、残り50GWが未稼動の状態です。このうち半分はものにならないと言われていますが、仮にそうなったとしても、持ち越し案件は25GWもあるのです。さらに、今後は自家消費などの新しいモデルの太陽光発電所が新設されるようになるでしょうから、日本の太陽光発電市場は、まだまだ充分需要が見込めると思います。
一方、日本の太陽光関連企業の方々には、海外展開を検討して頂きたいです。日本の市場が縮小するかもしれないからというネガティブな理由ではなく、日本の高い技術と豊富な経験で世界に太陽光発電を普及させるという強い意気込みで挑戦して頂きたいです。