[特別対談 第1回]

O&Mのあるべき姿

CO2O 酒井正行社長 × ESI 土肥宏吉社長

故障の50%が施工起因

プロフィール●酒井正行(さかい・まさゆき) 1975年千葉県生まれ。97年早稲田大学卒業後、映像関連企業で活躍。大手光ディスクメーカーで新規事業を担当し、2007年事業を分社化してバリュープラスを創業。テレビ局、ラジオ局のEコマース事業やスマホ配信事業を開発。その後、大手太陽電池メーカーのアフターメンテナンスをサポートし、14年CO2Oを設立。O&Mの契約量は80MWに達している。

土肥氏●欧州では、太陽光発電所のトラブルの50%が施工起因という報告が上がっています。ですから、故障リスクを軽減するためには、どのEPCがどのように建設したのか、そして20年間の運用を考慮した設計になっているか、厳しくチェックするべきでしょう。メーカーとの保証内容やEPCの責任範囲、保険の適用条件なども要注意です。メーカー保証と保険があるからリスクはヘッジできていると思っていると、落とし穴に嵌ります。

 

酒井氏●私は、EPC会社の瑕疵担保期間が完工後1〜2年しかないので、後々大きな問題になると危惧しています。というのも、発電所の潜在リスクが顕在化するのは3年目以降が多いからです。残念ながら、質の悪いEPC会社によって、保証期間さえトラブルが生じなければよいという思想のもと、建設された発電所が多々あります。

そんな不良発電所でも、プロの目で見ない限り、潜在リスクを可視化できないのが実態です。事業主の方々は早めにリスクを把握して、EPCに問題があれば、交渉してなおしてもらうことも検討するべきだと思います。

 

土肥氏●ドイツでも日本と同じように、最初はメンテナンスフリーが信じられていて、次に遠隔監視システムと駆けつけをすれば何とかなるという段階がありました。確かに遠隔監視システムは重要なツールで、パソコンに例えるとメールのようなもの。とはいえ、重要なのはそのツールを使って何をするかですよね。

その後、ドイツのO&M業者は、複合化した付加価値サービスを提供するようになるのですが、一段落すると、CO2Oさんのようにデューデリジェンスをやって、発電所の状態を把握してから、オーナーの意向に沿った形で発電所ごとにメニューを提示するようになりました。現在は、プロのO&M企業が鎬を削り合う競争市場が生まれていますが、その一方で、各社の得意領域がはっきりしてきたので、業者間の提携も進んでいます。CO2Oさんの強みはどこでしょうか。

 

酒井氏●デューデリジェンスとコミッショニング(性能評価)です。ここに関しては日本でトップクラスだと自負しています。当社はエンジニアを現場に派遣して、発電所が抱える潜在リスクを顕在化していきます。実際、EPCや部材メーカーも気がつかなかったPCS(パワーコンディショナ)や接続箱の瑕疵を我々が見つけたこともあります。

当社の方針はリスクベースメンテナンスです。HOWという手段の前にWHAT、つまりどこにどのようなリスクがあるのか、それを洗い出してから手段を考えていくというスタンスです。そして発電所をリノベーションして価値を高めていくことを目指しています。

 

土肥氏●発電事業者のために、最低限のコストで最大限のパフォーマンスを引き出すO&M。これこそ本来あるべき姿なのでしょう。まだまだ課題の多い日本のO&Mですが、我々の手で発展させていきたいですね。

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